エニアグラムを語る上でたまに聞くのが、健全とか不健全、あるいはレベルという単語もあるでしょうか?
これらは全て、「健全度」あるいは「成長のレベル」と言われる言葉で表されています。
今回は、この健全度についてザックリ見ていきましょう。
健全度は9段階!
公式書籍では「成長のレベル」「発達の諸段階」などとされており、元来はこちらが正しい表記ですが……わかりやすさと個人的にしっくり来る点を重視し、ここでは「健全度」で統一させていただきましょう。
さて、そんな健全度を表す図式は、おそらくエニアグラムついてある程度深く踏み込んだ書籍には書かれてることが多いでしょう。
これのことですね。
分析の最初から始めれば、発達の〈段階〉には九つあることがわかる。つまり、分析の健全な部分に段階1から段階3、通常の部分に段階4から段階6、不健全な部分に段階7から段階9までである。ある人がどの〈段階〉にいるのかを特定できる力があれば、様々な理由で助けになる。
性格のタイプ【増補改訂版】「自己発見のためのエニアグラム 」P548より
絶版ゆえのこの価格……!もうね、値段見た時「バカか」と思いましたよ。
ちなみに私は図書館で借りました。こんなん手が届きませんよ普通……
ちなみに健全度の説明自体は最近の書籍でもきちんと為されているので、その点はご安心ください。面白いことになっているのでリンクを貼りたかっただけです。
とは言え、この書籍に書かれてる内容は非常に濃密で、新版ではオミットされた部分も少なくありません。どうしてこうなった……
正直ちょっと読んだだけでは頭に入るような内容でもなし、手を伸ばせる方は伸ばされても良いのではないでしょうか?
さて、嘆いても始まりません。話を戻しましょう。要するにこの健全度のシステムを簡単にまとめれば、以下の通りです。
- タイプごとに9段階の健全度があるよ!
- 数字が大きくなるごとに不健全に、小さくなるごとに健全になっていくよ!
- レベル1〜3を健全な段階、4〜6を通常段階、7〜9は不健全段階に分類されるよ!
健全度は心の余裕や気持ちの楽さ、ひいてはストレスとの向き合い方や心のバランスによって判別されます。
健全な状態では心が安定しており、ストレスに対してもうまく切り抜けることができるでしょう。
対して不健全だと行き詰まりや悩みを強く感じるようになり、ストレス耐性もガタガタ。場合によっては八つ当たりや孤立、所謂「嫌な奴」に成り果てるなど、うまく生きられない状態になっていってしまいます。
自分や人がどのタイプであるかだけでなくどの段階にいるのかを漠然とでも理解すれば、より自分の生き方が見えてくることでしょう。
健全度ごとの状態
さて、それでは、ここからは健全、通常、不健全に分けて、それぞれの状態について見ていきましょう。
健全な段階
強烈な自我、囚われからある程度以上解放され、バランスが良く成熟している状態と言えるでしょう。
ただし、自我や自己イメージは強力なもの。こと囚われや根源的恐れを手放すのは、最高ランクのレベル1に達した証。
逆を言えば、健全でもレベル2、レベル3くらいではまだまだ多少の意識をしてしまうということです。難儀な話ですね……。
とは言え、心が軽く開放されて、公私において非常に良いパフォーマンスを発揮できる状態であると言っても問題ありません。
難しいですが、できればこの状態を目指していきたいものですね……
レベル1・解放の段階
もっとも理想的な状況であり、一番良い状態ですが、たどり着くのは非常に難しい状態でもあります。
というのも、この段階は「自分の中の囚われや根源的恐れ、抱いていた自己イメージすら捨て、それらを凌駕した状態」と言えるもの。
例えばタイプ6ならば心の底から「支えの有無は関係ない」「答えは自分の中にある」と言ってしまえる状態、タイプ5なら「自分は観察者ではない」と自ら積極的に課題や問題に取り組んでいける状態を指します。
仮にこの状態に至ったのなら、あとはそれをどう維持していくかの勝負となるでしょう。
レベル2・心理的受容力の段階
何かしら強い自己イメージを持っており、それに則って自分を高めていっている段階。
とは言え、多くの自己イメージは根源的恐れのアンチテーゼ。この段階に至ってなお、まだ根源的恐れを意識してしまっていると言えるでしょう。
もっとも、そうは言っても健全は健全です。しっかりと自分の課題や問題に焦点を合わせ、自分なりの最善を尽くせる状態で、自己実現の段階にある状態です。
レベル3・社会的価値の段階
健全で自己実現のためにしっかり自分と向き合える状態。とは言え、このレベルから徐々に囚われの影がチラつくようになります。
というのも、このレベルではまだ自己イメージも補強段階。凌駕するどころか、未完成の状態です。
そのため自分の中でペルソナと言われる仮面を作り出し、なんとか社会や現実に適応しようとする姿も見られます。
ペルソナというのは、要はあれですね。簡潔にいうと、「人は状況に応じていろんな自分を演じますよ」という概念です。
ユング的には、性格は自分の傷を隠すためのギプス。本質とは別物とのことです
当然健全な状態なので、心理的には良好。バランスはしっかり取れている状態です。
しかし油断していると囚われや根源的恐れの示すままに行動し、通常段階に落ちてしまう可能性も……
通常段階
かもなく不可もない状態とでもいうべきでしょうか。普通の人は、基本的にこの段階にいます。
致命的なまでに問題が起きているわけではありませんが、根源的恐れが本格的に顔を見せるのはこの状態からです。
まだまだ「なんとかしないと」と思える状況ではありますが、根源的恐れというだけあってなかなか払拭できない、本質にも食い込む心の問題です。
この問題に囚われれば囚われるほど「自分はこういう人だ!」という強烈な自己イメージにしがみつき、なんとか自我を維持しようとするようになります。
その自我の大きな部分がもたらすものこそ、囚われと言ってもいいでしょう。
レベル4・不均衡の段階
漠然と根源的恐れを感じている状態といって良いでしょう。
まだまだ全然自己イメージを維持しきれないほど落ちてはいないので、十分心のバランスを保てる状態です。
とは言え、根源的恐れを強く感じ、「なんとかしなければ……」と強く思い始めます。その結果、囚われや要求が表出化することも少なくありません。
例えばタイプ6が「この人は敵か味方か」で人を見始めたり、タイプ2が独特の「媚び」を見せ始めるのもこの状態と言えるでしょう。
レベル5・対人関係支配の段階
レベル4よりもさらに落ち込み、より自分の考えた自己像や囚われへの固執を見せます。
また、この段階になると自己中心性も顔を見せ始め、「人を都合よく動かしたい」という思いが強まります。
これより上のレベルと比べると明らかに否定的で、対人関係の苦労も増えます。
ここで自分の気持ちを和らげることができればまた上へと迎えますが、失敗すると一気に心のバランスを失うことになるでしょう。
レベル6・過補償の段階
病的とまではいきませんが、ここまで来ると目に見えて「健全じゃない」ということがわかります。
いよいよ根源的恐れも臨界点間近といったところで、メンヘラのような状態や自己中心的な振る舞い、横暴な態度も散見するかもしれません。それだけ余裕がない状態です。
根源的恐れを他人にどうにかさせようとする状態で、レベル6まで落ちた人は明らかに危険水域です。根源的恐れに対して過剰防衛して応対している状態で、他人を貶める「鉛の法則」も見られるようになります。
不健全な段階
ここまで落ちてしまうと、もはや「病んでいる」「病的な振る舞い」と言えるでしょう。当人の主観で言えば「ほとんど手詰まり」と言ってもいいかもしれません。
不健全な状態に落ちるには、相応に派手な不幸に見舞われるケースがほとんどです。
それこそ子供の頃から尋常でないストレスを日常的に受けていたとか、とんでもないショックな出来事が発生した時くらいでしょう。
不健全な状態は、正しく袋小路と言える状況。ただただ「ヤバい」「このままではダメだ」と思うばかりで、解決策が一切ない、あるいは思いつかない状態です。
当人にできることといえば、自我になんとかしがみつくことだけ。レベル9にもなると、それすらできなくなってしまうわけですが……
レベル7・侵略の段階
さらけだす自分もなければ、自分を外界から守る壁もとっくに崩壊された状態。ここから先は、ただただ根源的恐れや強迫観念に蹂躙されるばかりでしょう。
それでも生き残りのために自我とは違う打開策を試みるも、当然付け焼き刃ではうまくいくことはありません。
自分も他人も、何も信じられない状態とでも言えばいいでしょうか。神経質で過敏になり、常に自分をおびやかす「何者か」の影に怯え、必死に自分にしがみつき、逃げ回ることでなんとか自我を守ろうとします。
レベル8・妄想的思考と衝動脅迫的行為の段階
レベル7で試みた付け焼き刃の対抗策も自我防衛もうまくいかない。ならばもうどうしようもないね!とある種開き直った状態と言えます。
ここまで落ちてしまうと、もう現実を正しく認識するなんてどのタイプでも不可能です。
何らかの形で作り出した妄想世界を現実だと感じ取り、あるタイプは「世界こそが間違っている」と主張し、あるタイプは被害妄想に駆られて「自分を守らなければ」と必死になり……
何にしても、もはやまともな状況と言えないでしょう。
衝動的な早合点から得た妄想を現実のものとして見て、強迫観念にしたがって動く。
ここまでくると、自力での脱出は困難といえるかもしれません。
レベル9・病理的崩壊の段階
完全に崩壊した状態。自我の防衛すらまともにできず、ある意味では「その場にいない何者かに完全敗北した姿」と言ってもいいでしょう。
理性もない。正常な判断力もない。何もかもが終わっている。そんな状況でも微かにでも残った自我を守らなければなりません。
落ちるところまで落ちた姿では、当然何事もうまくいかないでしょう。その中で唯一自分の中に残ったほんのわずかなアイデンティティを守るために取れる行動は、破壊か、死か、暴力か……。
いずれにせよここまで落ちると下限はなく、どのタイプでも等しく自我の崩壊は近いでしょう。
レベルは状況によっても変わる
実のところ、健全度のレベルは一定ではありません。大体その日の気分や出来事、状況によっては、2〜3くらい変わることでしょう。
なのでレベル7の不健全状態にある人がずっとそのままということもなく、逆にショックなことが起きると健全状態でも一気に落ちてしまいます。
一方で、レベル=気分ではないという点にも注意が必要です。
レベルとは、根源的恐れや欲求、囚われや自己イメージとのうまい付き合い方ができてるかどうかによって判断できます。
例えばタイプ8が誰かを殴り倒していい気分になっていたとしても、それが健全な状態とはちょっと言いたくありませんよね?
強引に解釈しますが……気分がいいと人に少しだけ優しくしたり寛容になれる。そのうちの「優しくしたり寛容になれる」という結果を「健全度が上がっている」といえるのです。
あくまでそこは忘れないようにしたいところですね……
各タイプの健全性を崩壊させるダークサイド
こいつに関してはほぼほぼ独自理論です。一考に価しないという方は離れていただいて結構です。
囚われ、根源的恐れ、根源的欲求。この3つの要素が強まるにつれ、各タイプは健全性を失い、より囚われの中に嵌っていきます。
ですが、正直3つの要素を全部見るのはそれはそれで結構大変ですね。というわけで、個人的に「ダークサイド」という形で各タイプの不健全化の要員3つをまとめてみました。
健全度ごとの各タイプの様子も記載しているので、よろしかったら以下ご覧ください。
タイプ1:内なる裁判官
タイプ2:支配欲
タイプ3:承認欲求
タイプ4:思い込み
タイプ5:臆病
タイプ6:期待
タイプ7:自己中
タイプ8:敵視
タイプ9:なかったことにする
筆者:春眠ねむむ
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