タイプ9の人たちは、何だかのほほんとしていてダークサイドとか想像つきませんよね。
毒にも薬にもならず平和に生きるタイプ9には、人の醜さとかエグさは無縁……とついつい考えてしまいますが、それでもやはりタイプ9も人間です。心の内には、他タイプに匹敵する闇を抱えていると言ってもいいでしょう。
タイプ9は自分たちの空間がのんびりゆっくりとしたものになるよう裏方としてサポートに徹する力がありますが、不健全になるにつれて受動攻撃や深く考えていない発言が目立つようになるタイプでもあります。
この点が、タイプ9のダークサイドに繋がる性格と言えますね。
健全度別のタイプ9
健全度に関しては以下の記事をご覧ください。
レベル1 | 自分自身を「モブキャラ」「世界への関わりは求められていない、重要ではない」という思い込みを手放す。 タイプ9特有の落ち着きや穏やかさをそのままに、存在感がある。世界と真の意味で繋がりながら、「安定した気持ちと心の平穏」という根源的欲求を果たす。 |
レベル2 | 自己イメージ、「安定しており、気楽で親切な人間」。対人関係や周囲に積極的に気を配る。 自意識はいい意味で低く、「どう見られるか」よりも「自分と周りを調和させるためにどうするか」を重視する。 |
レベル3 | 自ら平和的な世界や調和のために動き、それを維持することで自己イメージを高めていく。 辛抱強く鷹揚で、人を鼓舞し、穏健的なアプローチを周囲に試みる。 多くの場合は粘り強く創造的で、より平和で癒しのある人生に向けて現実的かつ前向きなヴィジョンを見る。 |
レベル4 | 人生における葛藤や悩み、調和の乱れを明確に「邪魔だ」と認識し、自らは不穏な状況を生み出さないようイエスマンに終始する姿も多くなる。 控えめだが相手に合わせるような言動や行動が多くなり、やりたくないことでも「大した問題ではない」と軽視して相手に同意するようになる。 |
レベル5 | 変化も強い感情も、自分の心の平和を乱す悪いもの。自分の平和な世界は、変化や感情に耐えられるほど強くない。そんな思いがタイプ9を事なかれ主義に傾かせていく。 世の中のいろんな物事、いろんな出来事、いろんな感情に振り回されるのを明確に嫌い、とにかく問題を無視して、何があっても慣れ親しんだいつも通りの行動を貫こうとする。あらゆる問題を軽視し、「どうでもいいもの」として扱い、とにかく避ける。愚痴は言っても動かない。不満がある方が変化よりマシ。 |
レベル6 | 「自分の感情も変化ももちろん、人から反応を求められることも自分を不安にさせ、心の平和を壊す要因」と考えるようになり、とにかく自分に問題提起や解決案の提示などのお鉢が回ってこないようにしたいと願う。周囲が現状に問題意識を持ったり、変化を求めることがないように周囲を操作したがるようになる。 問題や状況を過小評価し、とにかく少しでも周囲が問題意識を持たないように気を逸らそうとする。 怒りを抑圧するための願望に何が何でもしがみつき、淡々と何も感じないように人生を歩む。 |
レベル7 | 迫ってくる。現実が。自分が無視してきた問題や課題の数々が。タイプ9は嫌々でも問題に取り組まざるを得ない状況を怖がり、全てがどうにかなる魔法の空間「ダイジョーブ空間」を脳内に作り出し、それを現実に投影して現実逃避を試みる。 「全部大丈夫。どうにかなる。問題ない。オールオーケー」と脳内で念仏のように唱え、自分の問題に取り組むためのあらゆる努力を拒絶する。 投げやりで無気力。生気もやる気もない。 |
レベル8 | 自分にわずかに残された平和な空間に何としてもしがみつき、頑なに現実を認めない。否定する。認めると多分終わる。 自分に何かしら影響を与えるものを敵とみなし、拒絶しまくる。自分の見える範囲から消し去ろうとする。 交友関係も消し、目の前にある問題も発生源も消し、自分をかき乱さないまっさらな世界を作ろうとする。記憶喪失になり、自分が何をしたのかも肩書きも仲のいい友人の存在も忘れることがある。 |
レベル9 | 「自分は現実を直視することができない」。この感覚から、タイプ9は現実世界そのものに失望する。もはや自分の胸の内にしか居所はなく、世界からのあらゆる干渉をシャットアウトするかもしれない。 おおよそ植物人間のように全く外界に反応しなくなるか、多重人格になって別の人格に自分を明け渡して平和な世界に旅立つか…… |
ダークサイド:なかったことにする
タイプ9が目指している世界は、何かに乱されたり壊されることのない居心地の良い平和な世界。特に通常段階においては、「何事もなく淡々と、成長も変化も必要ない空間が広がっていく」というような環境を求めることが多いでしょう。
当然、平和な世界なんてものは簡単には手に入るものではありません。人生には波乱やトラブルがつきものです。
そこで、タイプ9はある種の必殺技を行使します。それが、「なかったことにする」。
まず無関心になるのは、自分自身。「どうでもいいモブキャラ」として自己を定義することで、自分の中にある欲求や本音をなかったことにします。
それでもダメなら、今度は自分をかき乱してくる問題全部。初めは所属する組織内の問題や自己成長の必要性を「そんなもの始めからなかったんだ」と決めつけ、無視を決め込むでしょう。
その次に、レベル6の「いろんな人から反応や意見を求められる」という状況に「なかったことにする」の対象が広がります。
それでもどうにもならなければ、今度は周囲との関係、所属している集団、最後には世界の全て……と言った具合に、「そんなものなかった」の範囲は際限なく広がります。
どうしようもなく不健全まで落ちた時、タイプ9にとって世界はもはやどうしようもない詰みゲー状態。
こうなれば、あとはリセットボタンを押すだけ。自分の存在自体をなかったことにして、全くの別人として再スタートを切ることすらあるのです。
タイプ9の「なかったことにする」は「関わりたくない」と同義。つまり見切りをつけて自分の中から存在を抹消しているのと同じです。
世界に見切りをつけたタイプ9は、基本的に記憶喪失や多重人格になって、本当に自分やその足跡をなかったことにするわけです
段階別のタイプ9
通常段階のタイプ9
「平和のために邪魔なものを軽視し、切り捨てる」という一面から、「惰性と慣性で動き、同じことばかり繰り返そうとする」という怠惰の囚われに結びついた行動・言動が多いです。
そのため、平和的で一緒にいて嫌な気持ちにはならないですが、いわゆる「毒にも薬にもならない」という感じの人が多いですね。当人たちも、そんな立ち位置を望んでいます。
特に本音や欲求といった自我を「平和を乱す敵」と考えているフシがあり、とにかく自分で決める事や現状に一石を投じることを嫌うことが多いです。
一旦自分の中で一定の安定したリズムを見出すと、「一生この環境が続けばいいのに」と考えてしまうことも少なくないでしょう。
特に自己成長、自分の気持ちの解放、他人との衝突には強い嫌悪感を抱きがちです。
総じて自分の人生を「何となく生きている」という状態の人が多く、雰囲気や何となくの空気で全力で取り組むことはあれど、心が入っていることは少ないです。
「みんなやってるからやる」「とりあえずやれと言われたからやる」「そういう空気だから本気を出す」みたいな、非常に受動的なことが多いです。
無視とか約束の不履行みたいな受動攻撃が多いタイプですが、これにしても「抵抗」というより「なかったことにしている」という側面が強いです。
敵意も悪意も、自分の平和を乱す存在ですからね……
不健全段階のタイプ9
退行:タイプ6
基本的に現実逃避や「全部どうにかなる」という幻想にしがみついて自分の安全圏を確保しようとするタイプ9ですが、それでもどうにもならないケースも存在します。
逃げ場のない波乱や混乱、周囲から成長や課題への取り組みを強要されるような状況にぶつかったときは、特にタイプ9には大きなストレスになることでしょう。
打つ手がなくなったタイプ9は、まるで不健全気味のタイプ6のような振る舞いが多くなります。
- 受動攻撃に悪意が乗る
- 心配症になり、自分を安心させてくれるものに安易に飛びつく
- 突然ヒステリックになる
この辺りが、特に退行段階のタイプ9に多く見られる傾向でしょうか。
基本的に問題点をなかったことにして放置を決め込むタイプ9ですが、退行が進むと人が変わったように過剰に心配になり、オーバーワーク気味に行動するでしょう。気持ちも追い詰められており、見ないようにしていた悲観主義的な部分や疑念に満ちた性格を見せるようになるかもしれません。
また、自分だけではどうにもならないので周囲に丸投げしては、自分自身の責任をなかったことにすることもあるかもしれません。
気に入らないことには嫌がらせのような受動攻撃を用いて「なかったことにしろ」と暗に迫りますが……限界を迎えると癇癪を起こして周囲を焼け野原にしてしまうこともありますね。
それでもダメならば、いよいよ都合の悪い記憶を消したり突然別人格に目覚め、この世から自分自身を消し去ってしまうこともあるでしょう。
健全段階のタイプ9
統合:タイプ3
健全になったタイプ9からは、自分の本音ともしっかり向き合えるようになったタイプ3と近い性格が見えるかもしれません。
通常段階では「しがないモブキャラ」という立ち位置を貫いて自己表現や自己主張を極端に嫌うタイプ9ですが、統合するにしたがって、本音や自分にできることをしっかり「ある」と認識できるのです。
これまで見向きもしなかった自分自身にもしっかりとリソースを割いて、自分の成長や「人や集団、世の中のために何ができるのか」をしっかりと考えるようになることでしょう。
心から自分の人生を生き、心から自分の思ったことを感じ取り、心から自我や欲求の存在を認める。
健全なタイプ9は真の意味で自分の意識や世界としっかり繋がり、自分自身のことを本当の意味で大切にできるのです。
自分の気持ちに気づく難しさ
タイプ9にとって健全に向かう上での最大の障害は、自分自身の惰性に向かう慣性のような性質でしょう。
動くのにも力がいる。動き出すと力を使わないと止まれない。
特に、自分のためになることや自分の気持ちと向き合うようなことをすると、強烈なエネルギー不足を感じて眠くなったり疲れることが多くなります。
ですが、統合に向かえば向かうぶん、そのダルさや抵抗は少なくなっていくはずです。
正直、タイプ9的には難しい話ではありますが……まずは自分の欲求や本音を知ること。そして欲しいものを得るために動くことが最重要です。
周囲の立場や見方ばかりに意識が行ってしまう習慣があるので、なかなか自分の心に触れるのは難しいでしょう。
ですが、時間をかけてじっくり考え、自分が思っていることや周囲にどうして欲しいかを考え出してください。それらを知るだけでも半分はクリア。後の半分は行動です。
気持ちと向き合うのは難しいですが、すぐに思いつかなければならないものでもありません。時間をかけ、ゆっくりと自分の気持ちを書き出していきましょう。
自分の気持ちがあってはならない人など、この世に存在しません。
筆者:春眠ねむむ
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