囚われ | 怒り |
統合 | タイプ7 |
退行 | タイプ4 |
責任感や正義感が強く、常に高潔であろうとするタイプ1。
ですがその裏には「自分は高潔でなければ生きる資格がない」という無自覚の強迫観念、そして「自律を心掛けている自分こそが正しい判断を行える」という一種の傲慢さがあります。
特に「自分は優等生だ」「正しい世界が何なのかを知っている」という傲りはタイプ1のダークサイドともいうべきもので、これとどう向き合うかが健全度合いの鍵を握ると言ってよいでしょう。
健全度別のタイプ1
健全度に関しては以下の記事をご覧ください。
レベル1 | 受容的賢明。「自分は客観的で、理性的な判断ができる」という気持ちを手放した状態。 誠実で善良な人柄がそのまま表出し、結果的に理想的な「見識ある崇高な賢者」のような立ち位置を手にする。 |
レベル2 | 分別ある、人生の導き手。自己イメージ「思慮深く、穏やかで賢明」。善良な聖人であり、そんな自分を誇りながらも謙虚に日々を生きる。 |
レベル3 | 高潔で責任感ある模範生。大義のために個人的な感情を脇に置き、規律、倫理、目的のために動く。 良心と理性に従って道徳的に生きることで、自己イメージを強化しつつある段階。 |
レベル4 | 自分の正当性に若干の迷いが生じ始める。「実はみんな、大義や正義に興味ないの?」 生真面目で一生懸命。問題意識が高く討論や議論を通じてより良い方向に向かおうとするが、一方で自分の大義を人にわからせようとし、自己基準で周りを裁く。 |
レベル5 | 融通の利かない規範意識の塊。ストイックで自分をより良き人にするため努力し、一貫性を自他に求める。自分の言ったことを曲げない。曲げられない。 几帳面でイライラしていることも多く、自分の理想通りに動かない人間は自分であっても他人であっても罰そうとする。厳格な督戦部隊。 |
レベル6 | 自らの秩序と正義が他人に踏み荒らされるのを極端に嫌う状態。被害者意識の表出。 「みんな真面目にやっていない」「自分しか真面目にやっていない」という思いが強く、自分の理想を理解しない相手を罰して回る。 完全主義で100点満点当たり前の状態。皮肉屋で自説に固執する。 |
レベル7 | 「自分の理想が間違っている」という可能性を恐れ始める。だが認めるわけにはいかない。悪を見つけて裁いて回ることで、自分の正当性にしがみつく。「自分しかまともに世界を見ていない。バカばっかだ」 自己正当化に必死な状態なため、思考も硬直し心も閉ざす。交渉の余地はなく、いかなる悪も見逃さない。辛辣、厭世、独善。 |
レベル8 | 強迫観念に押しつぶされ、矛盾でも屁理屈でも、自分の正義を証明するために人をコントロールしなければ生きていけない状態。 一方でこれまでの禁欲が祟り、放縦や禁断のお遊びを自分だけはするようになる。「自分は良くて人はダメ」の典型。 心の底ではダメと分かっていても、もはや自分を止められない。 |
レベル9 | 完全敗北。「道徳から外れた許しがたい行いを、あろうことか自分がやっている」という現実を目の当たりにし、精神的にもはや耐えられない。 自分をダメにした奴もこんなに苦しい思いをする原因も全部許せない。罰する。復讐してやる。そんな状態。 もしかしたら自傷や自殺で自分を罰するかもしれないし、他罰を極めて誰かの殺害を企てるかもしれない。 |
ダークサイド:内なる裁判官
上記の表を見ていただければ分かる通り、タイプ1といっても、健全度次第でピンキリです。
遊び心があるタイプ1もいれば、周囲を引き締めるタイプ1、または自分の理想や正義に浮かれるタイプ1、あるいは無茶苦茶な課題を人に押し付けて常にイライラしているタイプ1も、厭世主義に取り憑かれてタイプ1らしくないタイプ1もいるかもしれません。
タイプ1の健全度を左右するのは、「自分こそがしっかりと判断を下せる」という傲慢さだと先ほどお話ししました。
ですがこの傲慢さにはまだ奥底に原因が潜んでいます。
それが、理性という名前の裁判官。
タイプ1の心に潜む理性、正しいか、正しくないかを見極める裁判官の役割を担っています。これがタイプ1の傲慢さの正体であり、また自分に厳しすぎる要因でもあります。
この理性が暴走して自己正当化と一方的な命令を繰り返してしまうことで、タイプ1の厳格さはだんだんおかしな方向へ進んでいったり、より過激なものになっていきます。

……パラノイア(TRPG)のコンピュータ様?
不健全なタイプ1はコンピュータ様というより、文字通りパラノイア(偏執病)ですね。
自分の正しさを絶対視するあまり、そこから少しでもあぶれた相手を不心得者であるかのように思い込みます。
そして不健全のタガが外れれば外れるほど、その不心得者を懲らしめるのが自分の役目だ考え、どんな手段を使ってでも相手を追い詰めるようになる、と……
各段階のタイプ1
通常段階のタイプ1
囚われの怒りは、当人が「怒りは敵」と抑圧しているため基本的に表出しません。
ですが、裏では「どうしてこんなこともできないんだ!」「あいつはやる気があるのか!」と大きな怒りを膨らませていることが多く、結果として「怒りは溜まる一方なのに爆発させられない」という板挟みの状態にあることが多いです。
そんな状況下でタイプ1が怒りを表出させる手段として用いるのは、
- 自己正当化
- ネチネチと攻撃
この2つです。
まずタイプ1は「怒るのははしたない行いで、自分がすべきことではない」という強迫観念を抱えています。つまり、素直に怒りを爆発させられないわけですね。
そのため、大概の場合は「相手のために心を鬼にする」「相手の欠点を指摘して正す」という大義名分で自他を納得させようとします。
当然、相手を正すために手を上げたりするのは聖人君子としては論外なので、相手に間違いを認めさせるために理論的に詰ったり皮肉をいう形で警鐘を鳴らすことが多いですね。
もっとも、この行動の裏には「快、不快」「好き嫌い」という個人的感情もないとは言えません。というか、むしろそっちで物事を選ぶことも多いです。にんげんだもの。
ですが通常段階のタイプ1がそれを認めることは、自分の不出来を認めることに等しいのです。
良くも悪くも自分の正しさを信じ、油断すると非寛容に傾く状態ですね。
「完璧ないい子でいたい」という欲求が、不健全になるにつれて「自分は正しい」「周りはみんな間違っているから正さなければ」という驕りにつながっていきます。
その裏には当然、人を一方的に裁くことの楽しさとか拗らした承認欲求といった闇深い感情も含まれていて……

自分の怒りそのものから目を逸らすタイプ1も少なくありませんね。ありえないと思ってます。
自分の根源に食い込んでる拒否反応って、本当向き合うの難しいんです……
不健全なタイプ1
退行:タイプ4
不健全に落ちたタイプ1は、「どうせ誰もわかってくれない」「この世は悪に満ちている」という厭世感情から、「自分だけが正しくて他の人は全部ダメ人間だ!」という強烈な思い込みから、自分に合わないものを何でもかんでも否定する全否定お化けに成り下がることも多いです。
強烈なストレスにさらされるので、結果的に退行(分裂)状態に陥ることが多くなります。
「他の奴らが身勝手すぎてやってられない」「自分だけがこれまでこんなに頑張ってきたんだから」と自分を正当化しながらも、イケない遊びを堂々と始めることもあるでしょう。
「自分はいいけど他人はダメ」なんて身勝手極まる姿を見せることも多く、「自分だって逃げんたいんだ」という気持ちと、裁判官である理性から毎日のように届く厳重注意や通告の板挟みでさらに堕ちていくことも少なくありません。
健全なタイプ1
統合:タイプ7
一方、健全なタイプ1は遊び心を身につけたり明るい気持ちで日々頑張るようになり、いい意味で適当さを身につけます。
「自分の考えは完璧とは限らない」
「人それぞれの正義がある」
と人のことを認める機会も多くなり、自分の理想や自説ばかりを盲信する姿も薄れていくのです。
遊び心を身につけたタイプ1は、もしかすると健全で落ち着いたタイプ7と勘違いするような愉快な人になるかもしれません。
変に駆り立てられず、肩の力が抜けて、人の可能性を信じる楽観主義者。知的好奇心から自分と真逆の考えも積極的に聞きにいき、その一片でも「良い」と思ったものは取り入れる余裕を見せるでしょう。
また採用しなかった価値観にも無闇に格付けや裁定をせず、「そういう考え方もあるのか」と新たな学びにすることも多いです。
理性は善とは限らない

さて、そんなこんなでタイプ1の健全、不健全についてお話ししましたが……正直、タイプ7みたいに遊び回るだけではうまくいきません。
とりわけタイプ1は、自分の理性が厄介な存在になりがちです。理性から届く勧告や命令を絶対視してしまう傾向があるのです。
結果として人の意見を「正しいか間違っているか」で品評してしまったり、理性からの命令のままに無理をしてしまうことになってしまいます。
まずは何より、自分自身を厄介な理性と切り離すこと。間違っても絶対視しすぎないことが健全化に向けての課題になります。
「相手には相手の正しさがある」とか「不完全を悪と考えると人生が地獄になる」とか他にもいろいろありますが……
まずは何より、自分の中で「これが正しい」「こうするべきだ」「これは間違っている」と勝手に裁判を始める自分の理性と、ある程度の距離を取るのが先ですね。
これができるだけでも、タイプ1の肩の荷は大部分軽くなりますよ。
筆者:春眠ねむむ
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参考書籍
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