エニアグラムを学ぶと、ほとんどの書籍や解説で「囚われ」なるものが出てきますよね。
これっていったい何なのか……今回はそこのところを見ていきましょう。

いや何番煎じだよ……
まあいいですけど
ぶっちゃけ「囚われが性格の根幹」と言ってもいいくらい重要事項なので、ネットに似たような情報が大量にあっても構わんでしょう。
そんなわけで、今更感がありますがまとめていきましょう。
そもそも囚われとは

人間、生きていればいろんな強迫観念が生まれます。
「正しくない奴はクソ」
「地位のない奴はゴミ」
「自分を主役と思うのは愚鈍な証」
まあ他にもいろいろありますが……大なり小なり、人として生まれたからには思い込みを手放すことは不可能に近いです。
囚われとは、言ってしまえば強迫観念から生まれた感情。
エニアグラムでは、人が育った環境や教育などによって自然と身に付けてしまった強迫観念や思い込みを9つのタイプ別に割り出し、そこから生まれる感情を囚われと呼んでいます。
要するに、囚われとは各タイプの悪い本質のメタファー的な概念というわけです。
それぞれの囚われは以下の通り。
タイプ1 | 怒る奴はクソ |
タイプ2 | 自分は何もいりません |
タイプ3 | 俺って天才! |
タイプ4 | ルサンチマン!! |
タイプ5 | ケチるしかねぇ |
タイプ6 | 何もかもが怖い |
タイプ7 | とにかくいろんなものを詰め込む! |
タイプ8 | 俺は無敵! |
タイプ9 | 慣性の法則 |

…………何これ?
言い方で無理にオリジナリティ出そうとしてスベってますよこの人
ともあれ、これらがエニアグラムにおける囚われ。各タイプが固執しがちな感情です。
7つの大罪(憤怒、傲慢、嫉妬、強欲、暴食、色欲、怠惰、時代と文献によって虚栄、悲嘆)がモチーフとなっているとされていますが……その辺を深く言及すると宗教的なタブーを踏み抜きそうな気もするので、とりあえずこの場で軽くだけ触れておきます。
幼少期の欠落が原因?
エニアグラムは、性格をいくつかのタイプに分類して当てはめる類型論というものです。
とすれば、性格の形成にもある程度突っ込んだ話がされてまして……
そのうちの1つが、幼少期の家庭環境との関連です。
その中でも囚われは主に、親との接し方や環境の要因から発生します。幼少期の満たされなかった願望や親から否定されてしまった欲求を通して発生しているとされています。
例えば親から嫌われたりネグレクトを受けていれば自然とタイプ4やタイプ7のようになったり、何かした時しか愛情しか注いでくれない親に育てられればタイプ2やタイプ3になったり……
こんな感じで、幼少期に受けたトラウマや傷からある事を学び、その学びから自分の欲求を「生きる上であってはならないもの」として切り捨てようとしてしまうのです。
各タイプが子供の時に得た学びは以下の通りです。
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何ともまあ凄絶な家庭状況を想像してしまいますが……まあ「ぼんやりとでもそう思わせる何かがあった」って事です
結局のところ、完璧な親なんてこの世にいません。親も人間です。
子供がどれだけ欲しがっても与えられないものだってありますし、向けられて思わず不快になってしまう感情や要求もあります。
上記のメッセージは、自覚の有無を問わず子供に与えてしまった、「これくらいは我慢しなさい」という親からの要求なのです。
当然、幼い我が子にこれらのメッセージを直接ぶつけているのなら論外ですが……やはり純粋な子供ほど不思議と心の裏を読んでしまう事もあります。
囚われの多くは、思わず親が思ってしまった事や足りなかった視点や要素に子供が気づき、無自覚のままそれを教訓にしてしまうパターンで形成される事が多いです。
なので親が人格者であっても、囚われはどのみち生じてしまう点は留意しておいてください。
各タイプの囚われ
タイプ1の囚われ「怒り」
タイプ1は完璧主義。「間違いがあるのは悪い事だ」という幼少期からのメッセージのもと、自分も周囲も完璧でなければ満足できない性格を形成しています。
そのため大小の違いはあれど、タイプ1は世の中の間違いや堕落に対してとにかく静かに怒りを覚えます。
政治資金を横領する政治家に怒り、上司や同僚の手抜きや手柄の横取りに怒り、また部下の少しだけねじれたネクタイに怒り……
タイプ1は、無自覚に「間違っている!」と思ったものに怒りを覚えていますが、本人たちは「叱っているだけ」「怒りなんて感じていない」と本気で思っています。
というのも、タイプ1にとっては自分が感情任せに怒るのも間違っている事なのです。
タイプ2の囚われ「プライド」
タイプ2にとって、人助けは当然のことであり生命線です。
というのも、タイプ2の多くは小さい頃から家事を手伝ったり親の代わりに弟妹の面倒をみたりと、非常に「いい子」でした。
ですが、心の底では「いい子でないと愛されない」「自分のわがままをいうと親に嫌われる」と、嫌われる事を強く恐れていたのです。
実際、「手伝ってあげた時しか親は褒めても構ってもくれない」という人も多かったようですね。
そのため、タイプ2は自分の感情にも欲求にも蓋をして、「自分は大丈夫だから」と無理をしてでも人助けを行います。
お節介でも余計なお世話でも、自分が介入できることにはなんでも介入したがります。根底では「いいことをしないと誰も愛してくれない」と思い込んでいます。
そして「あなたのためにこんな事をしてあげたよ!」と猛アピール。タイプ2にとって、これだけが人との繋がりを失わないための方策なのです。
タイプ3の囚われ「欺き」
タイプ3にとっての唯一ともいえる生き甲斐が、人からの評価です。
というよりも、人から評価されない人間ならば、自分であっても他人であってもゴミ同然と思ってしまうところがあるかもしれません。
だから本気で人から評価される物を求める。多くは華々しい実績か成功でしょう。
自分には実績と評価しか存在価値を証明するものがない。他の人もきっとそうに違いない。
そんな狂信的な思いでがむしゃらに努力を続けながらも、実際に成功すると「才能ですかね?なんかやってみたらできたんですよ」みたいな顔をする。
もしも徹底的に追い詰められて努力でどうにかならなければ、嘘も謀略も差別も辞さない。
そんな感じの人たちですが、実はタイプ3が一番騙しているのは自分自身だったりします。
タイプ4の囚われ「嫉妬」
タイプ4はとにかく変わった人が多いです。
普通ではそこまで気にしないようなところにこだわりを持っていたり、何だか言動が私的で割と謎めいていたり……とにかく独特でやもすれば「意味がわからない」人もいるかもしれません。
タイプ4は自分が特別である事を喜びますが、同時に「特別じゃなきゃ生きられない」という考えも持っています。
「自分には何か普通に生きられない致命的な欠点があって、普通の人と同じ土俵には立てない」
と、心のどこかでそんな事を考えて、普通を過大評価し、嫉妬して、普通に対抗するために頑なに自分らしさという殻を見つけることに固執する。
そんな「特別でなければ存在価値を示せない」という人たちです。
タイプ5の囚われ「ため込み」
独立独歩であんまりにも人に頼らない印象があるタイプ5ですが……ある意味、孤独でちょっと浮いてるのが彼らなりの生存戦略と言えるでしょう。
「自分には力がない。周りも頼りにならない。だから、まずは自分の手で生き残るしかないし、強くなるしかない」
タイプ5の脳内を端的に表すと、こんな感じでしょうか。
無駄(浪費)を嫌う傾向もあるので、ある意味ミニマリストに多い性格かもしれませんね。
能力を誇示してなんとか自分の居場所を守りたい。そのためなら多少居場所が窮屈になっても構わないが、強くなる(得意分野に精通・熟達する)ためには非常に貪欲。
ですがあんまりにも自己補完に固執するあまり、非常に腰が重いし非協力的でよそよそしい人でもあります。
タイプ6の囚われ「恐れ」
タイプ6を端的に表すと、不安症です。
非常に謙虚で身内には協力的で親身ですが、内面では「敵に今の居場所を潰されるかも」「仲間の中に裏切り者がいるかも」など、無意識の本能レベルでいろんな不安を抱え、もしかしたらという可能性に恐怖しています。
ですが、そんな恐怖に対して自分にできることはない。なぜなら、自分の力なんてどうせ信用できるほどのものではないだろうから。
タイプ6はちょっとしたことでも不安を覚えてしまうため、そんな不安から守ってくれる導き手を欲しています。
その導き手はもしかしたら友達かもしれないし、会社かもしれません。あるいは信念や矜恃、金、権力、「自分は強い」という自己暗示……まあ色々ありますが、何かしら不安や恐怖に立ち向かうための指標や司令塔を欲しがっており、よくそれらを盲信します。
拠り所を得たタイプ6は迷いのない忠誠心を掲げますが、実はそんな拠り所が弱点になる場合も……。
タイプ7の囚われ「貪欲」
楽しいこと大好きで、面白そうな物を見つけたら暴走特急のごとく突っ込んでいくタイプ7。
ですがその裏には、案外鬱屈とした気持ちが眠っている事もしばしばです。
「どうせ誰も頼れないんだ!自分の手で自分の腹を満たすしかない!」
と、イマイチ親の力を当てにできない状況でポジティブな決意を固めた結果、何でもかんでも楽しいことに手を出す性格を示すようになりました。
無節操に片っ端から楽しい事を詰め込む一方、タイプ7が本当に満たされることはほとんどありません。
というのも、このタイプがやっているのはつまみ食い。物事のひとつひとつを深く味わったり影響されることはなく、刺激になりそうな物を一口で頬張っては、飲み込む前から次の刺激を探している人たちです。
タイプ8の囚われ「欲望」
タイプ8は物欲の多いタイプではありますが……欲望の本質はそこではありません。
「人生は闘争!俺は勝者として全てを支配してやるぜ!」
と、まあ本当にそう思ってるかどうかは人によりますが……大なり小なり強烈な支配欲を持ったタイプです。
そのため自己主張は全タイプ中トップクラスで激しく、どれだけ大人しい人でも自分の意見を全力投球でぶつけてきます。だからなのか、よく周りから怖がられてますね。
タイプ8は実は対等な仲間を欲しがっています。ですがそれ以上に、「負けたら奴隷として支配される」「自分は自由でいたい!奴隷は嫌だ!」という強烈な思い込みに支配されてもいるのです。
仲間と支配の両方の欲望が入り乱れた結果、「反論は絶対許さないけど、それでも反論してくる奴は好き」という矛盾した気持ちを抱えていることが多いです。
高圧的に周囲を制圧してしまうタイプ8にとって、対等の関係でいられる相手は自分に逆らう奴しかいないのです。
タイプ9の囚われ「怠惰」
タイプ9の怠惰の感情は、基本的に「急激な変化」「殺伐とした環境」に対する徹底的な嫌悪感です。
「自分の意見を掲げて誰かと争うのも嫌いだし、自由を求めて圧政者と戦うのも急な変化で自分の欲求が砕け散るのも大嫌い。だったらいっそ何にものめり込まず思い入れも持たず、ほどほどを享受すればいい」
タイプ9が嫌いなのは、自分がのほほんと平和に生きられる環境を壊す物全て。その中には自分の欲望も本音も含まれます。
だからタイプ9は自分の意見をほとんど表明しませんし、心の底ではほとんど思い入れを示しません。
ですが適当に全部受け入れることで世界との接点がどんどん薄れていき、無頓着によって周りとの溝が深まっていく事もあります。
ちなみに最終手段は「急なドロップアウト」と「現状へのしがみつき」。
怠惰に囚われたタイプ9にとっては、時に孤立する事も些末な問題なのです。
どれも悪いことではないんですがね……
個人的には、どの感情も悪い物であるとは思えませんね。
ただ何が問題なのかというと、「感情や欲望が行きすぎる」のが問題なわけで。
不正や不出来に対する怒り
自分の良心や自己犠牲に対するプライド
成功や評価のための自己改変
特別でないものへの嫉妬心
自分の知識や技術を磨くための引きこもり
未来や現状への不安や恐れ
楽しい事を貪欲に詰め込む好奇心
弱肉強食の世界を生き抜く強さへの欲望
平和や平穏を求めるためのある種の妥協
どれも、それらに支配されなければ悪いものではないはずです。
それぞれに思うところもあるでしょうし、「何が悪い」という疑問もあるでしょう。
ですが、どれほど良い感情でも囚われすぎて強大なエゴになれば、それは歪みとして自分を苦しめたり、本質を見失うことにもつながります。
囚われを意識しすぎても苦しくなる一方ですが……これらの気持ちを自然とある程度手放すことができれば、世界の見え方も一気に変わるかもしれませんね。
筆者:春眠ねむむ
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