嫌がらせをする人って、いてほしくはないけど結構いますよね。
なぜ嫌がらせをするのかとか目的とかは人によってマチマチですが……総じて言えるのは「余裕がない自分を慰めるために、人を自分以下の存在に仕立て上げる」というのが大きいでしょう。
エニアグラムにも、そんな他人への嫌がらせに関する記述があります。それが、「鉛の法則」というやつです。
鉛の法則とは?
人は他人に嫌がらせやいじめを行うとき、自分がされたら一番嫌なことをする。
そんな言葉をどこかで聞いたことはありませんか?
鉛の法則とは、ぶっちゃけてしまえばこの「自分がされたら一番嫌なこと」そのものです。
私たちは、通常の段階のレベル6と不健全な段階レベル7の境界で、ある特徴が生じることを発見し、「鉛の法則」と呼んでいます。
有名な黄金律が、「自分がしてほしいことを、人にもせよ」と述べているのに対し、鉛の法則は、「自分がもっともしてほしくないと恐れることを、人にもせよ」ということになります。
新版エニアグラム【基礎編】 P118より引用
「彼を知らず己を知らざれば、戦うたびに必ず敗れる」……いや、何でもないです。
なんだかんだ、一方的に何もしてない相手を攻撃してる時点で、人としては大敗ですね
「人の不幸は蜜の味」とも言いますし、人は余裕がない時ほど「誰かの足を引っ張って落ちるとこまで叩き落とせば、相対的に自分のレベルが上がる」とどこかで思い込んでしまうものです。
当然追い詰められれば追い詰められるだけ「誰かを自分以下にしないと」という思いが加速して、最後の最後には誰彼構わず、ちょっとでもムカつく奴とか何となく味方じゃなさそうな人に片っ端から攻撃を始めるかもしれません。
「鉛の法則」が発動するのは、基本的にとことん余裕がなくなった時。自分の囚われにしがみつき、それでもうまくいかなくなり、頑なになって行う最後の抵抗なのです。
各タイプの鉛の法則
さて、「鉛の法則=余裕がなくなった時に始める嫌がらせ」と語ったところで、早速それぞれのタイプがどんな嫌がらせを始めるのか見てみましょう。
タイプ | 一番恐れること | 人への嫌がらせ |
---|---|---|
1 | 自分がよこしまで、堕落し、欠陥があること | よこしまで、堕落し、欠陥があることを指摘する |
2 | 自分が求められず、愛されていないこと | 愛情や寛大さ、関心を受けるに値しないと感じさせる |
3 | 自分に価値がなく、有用でないこと | 横柄に扱ったり、軽蔑することで無価値だと思わせる |
4 | 自分にアイデンティティや個人的存在意義がないこと | 取るに足らず、価値や存在意義がないかのように、軽蔑的に扱う |
5 | 自分が無力で、無能で、役立たずであること | 無力で、無能で、愚かで、役に立たないと感じさせる |
6 | 自分が支えや導きを持たないこと | 人を支えるシステムを揺るがせ、何らかの方法で孤立させようとする |
7 | 何らかの痛みや欠乏に陥ること | 人の痛みを引き起こし、さまざまな方法で欠乏感を味わせる |
8 | 人に傷つけられ、コントロールされること | 威嚇することで、傷つき、コントロールされると人に感じさせる |
9 | 人とのつながりの喪失に苦しむ | 「関心を示さなくなる」ことにより、自分とのつながりを失ったと人に感じさせる |
こうやって見ると、いろんなものに繋がっていきますよね。
囚われ然り、根源的恐れ然り……
要するに、根源的恐れを他人に押し付けて「お前こそが私にとっての爆弾を全部抱えたクソみたいな奴なのだ!」と必死にレッテルを貼ろうとする。そうやって誰かに勝利宣言して、必死に「自分は間違っていない」と言い聞かせる。
これが鉛の法則の正体です。
さて、これだけで話は終わったも同然なのですが……せっかくなので、各タイプのやりそうな嫌がらせについてもう少し詰めてみましょう。
タイプ1
タイプ1の嫌がらせの仕方は至って単純でしょう。
いちいち人のやることなすことを監視して、「だからお前はダメなんだよ!」「どう落とし前をつけるんだ!」と否定しながら自分の思う正解を押し付ける。
やってることは割といつも通りなのですが、不健全手前ということでタチの悪さに磨きがかかっています。
「お前、今ファックス用紙を落としただろ。その落として汚れた紙で、重要書類を印刷してみろ。汚い紙を使ったせいで大問題になってここにいるみんながクビになるぞ。責任取れるのか?本当気をつけてくれよ!」
実際に私が知る不健全気味のタイプ1が言っていた言葉をほぼそのまま引用しましたが……まあ要は小さいことでも大袈裟に言って、「お前はとんでもないミスをしたんだぞ!」と煽り立てるわけですね。
あるいは、「誰もお前を愛さない」というネタを、自分ではなく他人にぶつけるかもしれません。大真面目な顔をして。
要するに「お前は全部間違っている」「致命的なまでにダメな奴だ」と言いたいわけですね
タイプ2
一方的な嫌がらせの印象が少ないタイプ2ですが……鉛の法則が発動するくらい不健全になれば当然やってしまいます。
「愛されるに値しない」とわからせる。つまり一番考えられるのは、誰かをハブにしたり完全無視が多いでしょうか。
例えば会社やクラスの女子がバレンタインの日にみんなに義理チョコを渡して回る中、わざわざ自分一人だけには絶対配らなかった……みたいなのは典型かもしれません。
好戦的な人になると、稀に「誰もお前を愛さない」を人にぶつける事もありますね。正直、このタイプの裏の顔は結構苛烈です。
後述のタイプ6と同様、正義VS悪の構図が好きなタイプでもありますね
タイプ3
不健全になりそうなタイプ3は、極力間接的に相手の名誉を毀損したり、さらりと差別的な発言や否定を繰り返す事で「お前は我々とは違う」とアピールすることを好む傾向にあります。
一番恐れているのは、「自分がこれまで演じてきたヒーロー像が否定され、誰からも否定されたり無視されること」。
つまり鉛の法則に則ると、人格攻撃や存在否定を好む傾向が強いわけですね。
というよりヒーロー(自分)VS悪党(標的)という構図が割と好きなタイプです。どんだけヒーロー好きなんだ。
「あんな低俗な奴らと一緒にされなくてよかった」「あいつら暇人と無能とゴミの集まりじゃね?」みたいに特定集団を嫌みったらしくネチネチこき下ろすようになると、いよいよ危険信号……かも?
直接殴るより安全圏からの空爆が好きなタイプなので、周囲を巻き込んで多数で攻撃する事もあります。
相手を「愚かな存在」「低俗な奴」として、名声を傷つけにかかるのが最たる手段でしょうか
タイプ4
目的はタイプ3と近いですが、こっちはダイレクトに攻撃することが多いです。
まず鉛の法則への入り口として多いのは「相手の趣味や好みの否定」でしょうか。
「ガキっぽい集まりではしゃいでんじゃねーよガキどもが」とか「お前本当、低俗なことでよく喜べるよなー」とか、結構突拍子もなく突然否定することが多いです。
それが効かなかったり気が晴れないと、今度は遠回しに「お前死んだほうがいいよ」みたいなことを言い始める事もあります。
あと、不健全が近づくと被害者意識が強くなりがちで、よく「あいつが全部悪いの!」みたいな態度をとる事も多いです。
不器用な人や他人を巻き込むのが下手な人が多いタイプなので、大抵は自分から孤立していくことが多いですね……。稀にうまくいくと大惨事になりますが。
正義VS悪とは違いますが、被害者として振る舞おうとするのは不健全なタイプ4あるあるだと思います
タイプ5
何の因果かタイプ3のやり口と似たことを好みます。これも合理型の性か……
ただしタイプ5の方が外面や周囲の評判を気にしないので、攻撃もより苛烈なものを好む傾向が強いです。
一番多いのはSNSや掲示板で晒したりとか何かを無駄にこき下ろしたりとか、偽の罪状をでっち上げてみんなに広めたりと言った手法でしょうか。
全否定する材料のためだけに、わざわざ細かいところまで知ろうとする暇人も少なくないですね。
性格上クレバーなやり方を選びがちなので直接攻撃より被害は少ないですが……タイプ3同様安全圏からの一方的な空襲を好むので、まあタチが悪いタイプの1つですね。
タイプ3以上に能力に言及することが多いタイプでもありますね。
相手の知性や能力を疑ったり否定するのは常套手段です
タイプ6
多いのは「標的の悪口を周囲に言いふらす(孤立させる)」と「相手の考え方にいちいち突っかかって否定する(支えを揺るがす)」という方法だと思います。
というか、タイプ3より輪をかけて正義(自分)VS悪(標的)という形を作る事に躍起になるタイプですね。ここまで来ると正義はただの免罪符です。
タイプ6も表舞台に出るのを嫌うタイプなので、当然ノーリスクな場所からの一方的な攻撃が大好き。
不健全なタイプ6の前で本人の考えと違うことを言ったり正論をぶつけて意見を否定したりすると、すぐに取り巻きからのいじめに遭う事もあるでしょう。
6w5は罵倒や人格否定を通じて相手の尊厳を奪うことを好み、6w7は集団生活が得意なので多対一の構図に巻き込むことが多いです。
ある意味、全力で相手の支えをへし折りにきてますね。
6w5は信念、6w7は仲間と言ったところか
タイプ7
正面からぶん殴ってくるかと思いきや、意外とクレバーなやり口を好むのがタイプ7。
不健全になるとタイプ1のようにネチネチと嫌がらせや粗探しに没頭する事も多いタイプですが、その傾向は鉛の法則発動時から顕在していきます。
相手のトラウマや弱点を想起したり、相手の言論に噛み付いて否定することが半ば趣味と化す事も考えられますね。
鉛の法則下にあるタイプ7にとっては、相手を「おもしろくない」「悲しい」「苦しい」などネガティブな気持ちに追い込むのが1番の目標になるのです。
手段はともかく、目的は単純明快ですね。
「相手が悲しめばそれでよし」。うん、わかりやすい
タイプ8
タイプ8のやり口はシンプルですね。行動原理もシンプルなので、鉛の法則もストレートです。
そのやり口は脅す、常におびやかす、命令する。相手の自由を奪って「お前は俺の道具なのだ」と体の芯から教え込むのが、鉛の法則下のタイプ8が立てる目標です。
多分もっともパワハラを好むタイプ、意気消沈した相手を見て楽しむタイプと言えるでしょうね。
又聞きのタイプ8の話ですが、「物事の全てはロジック」の信念のもと、周囲を締め上げて萎縮させ、新人をパワハラで辞めさせる事に勤しんでいるとかなんとかで……
「下手な奇策より正面突破が一番打撃が大きい」とは言いますが、本当その通りだと思います……
相手の自由を侵害したがるのも、鉛の法則下でのよく見られる行動ですかねー。
やっぱ自由が好きなんですよ、こいつら
タイプ9
受動攻撃の名手であるタイプ9は、鉛の法則下においても受動攻撃を繰り返し、知らずの間に相手との距離を完全に突き放します。
主だった方法は完全無視。
何を言われてもうんともすんとも言い返さず、相手から受けた指示も恩義も嫌がらせも握り潰す。自分の中から相手という存在を締め出すわけです。
「相手の存在を無い物として扱う」というのが、一番多いかもしれませんね。
同じく無視を好みがちなタイプ2は何だかんだ相手を意識しているのに対し、タイプ9は本当に相手の存在をなかった事にするのです。
一番害がなく一番気付きにくく、一番取りつく島の無いやり口と言えるでしょうね。
タイプ9の根源的恐れはつながりの喪失……なるほど。
つまり自分とのつながりを完全に断ち切ってしまうというわけですね
やってる時点で闇属性待ったなし
ここまで余裕がなくなると「自分は正しくて相手は悪なんだ!」と無条件に思ってしまうものですが……正直「自分は正しい!」なんて思いながら誰かを攻撃してる時点で、十中八九よろしくない状態です。
鉛の法則は、自分がよくない方向に片足を突っ込んでいる時に出てくる危険信号のようなもの。
万一の時に踏みとどまるためにも、鉛の法則はある程度意識しておいていい話かもしれませんね。
筆者:春眠ねむむ
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参考書籍
エニアグラム解説
タイプ一覧
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