囚われ | 恐れ |
退行 | タイプ3 |
統合 | タイプ9 |
タイプ6は日本人タイプと言われている一方で、エニアグラムを知っている人の多くはタイプ6という自認を避けている傾向がありますね。やはり同族嫌悪の対象となっているのでしょうか……。
ともあれ、タイプ6は信じた友人や道徳、掟に忠実。みんなタイプ6を嫌いながらも、タイプ6の長所と言える部分を美徳と褒めそやしています。
もっとも、身近なタイプということでその短所も浮き彫りになりやすく、ダークサイドに関しては近所を見れば10人に1人はモロに当てはまっている人がいそうなくらいだったり……。
そんなタイプ6のダークサイドは、期待です。自分を疑い、守ってくれることを人に期待し、安心して暮らせる社会秩序のために各々がルールや掟を絶対に守ってくれることに期待し……そしてそんな期待から、疑念が生まれていくのです。
健全度別のタイプ6
健全度に関しては以下の記事をご覧ください。
レベル1 | 芯は自分の中にある。「何かしら支えがないと生きて行けない」と感じていた自分ではない。 自信があって浮ついたところはなく、勇敢でどっしりしている。愛と勇気の戦士的なアレ。 |
レベル2 | 自己イメージ「しっかり者で、注意深くて頼りになる」。フレンドリーで頼もしい存在で、人を惹きつける。 また、危機管理能力も高く、周囲の危険や心配を敏感に察知できる人物。No.2の鑑。 |
レベル3 | 協力的かつ献身的。仲間の中で有益なシステムを作り、それを維持することで「頼れる人間」という自己イメージを高めている最中の姿。人との連携をしっかりとこなせる。 倹約的、実質的で、配慮も思慮もしっかりしており、問題を事前に察知する。 |
レベル4 | 「自分は自立できない人間なのか」と不安に思うことが多くなる。独立心と支えのない世界への不安感の板挟み。 ルール、権威、友情、常識など、自分を安心させてくれるものに導いて欲しい。でも内心では不安を抱えており、何かについて離れてを繰り返すことも少なくない。 |
レベル5 | 防衛的で排他的な面が顔を見せ始める。自分が頼る支えこそが正しいと思わなければやっていられない。でも支えとなるものもどこかで信用できず、急に裏切ったり敵視することも少なくない。 警戒と衝動、盲信と反逆の二律背反。優柔不断。 |
レベル6 | 権威主義の権化にして反権威の権化。自分に自信がなく、とにかく自分を安心させてくれる人にホイホイついていく。「自分は支えを失いつつあるかもしれない」。 自分がついていくと決めた人に気に入られなければ急に不安になり、讒言やいじめを駆使してでも自分が気に入られる環境を作ろうとする。でもやっぱり些細なことで裏切られたと感じて叛逆する。 シニカルで攻撃的。不安の対象に対してオーバーで、誰でもいいのでとにかく敵や差別対象を作り、「こいつさえ排除すれば安心なんだ」と思い込むことで安易に安心しようとする面が目立つようになる。 |
レベル7 | 何もかもを信用できなくなってきてパニック状態になる。「他ならない自分が支えを壊していってしまっているのかもしれない」とひどく恐れる。自分も、周囲も、何も信用できない。 他罰や敵の排除でも自分を安心できなくなり、最後に向かうのは自罰。 「誰か助けて」と願うが、助けも信用できない。不安や恐怖も被害妄想の域に達しており、パニックになりやすい。 |
レベル8 | パラノイア。被害妄想。残されたほんのわずかな安全地帯すら誰かに壊されると思い込み、確信に変わっていく。 ほとんど強迫観念に近い防衛意識から気に入らないものや人の全てを敵と認識して食ってかかり、自分でも何がしたいのかわからないほど徹底的に、影すら残らなくなるほど攻撃する。 もはやまともな思考はできず、空想上の存在やその場にいない人を徹底的に潰すべき敵だと思い込む。 |
レベル9 | 「自分は権威や信仰している相手に罰せられるようなことを山ほどしてきた」「仲間も上もみんな自分を見捨てているかもしれない」という最悪の自覚が絶え間なく襲ってくる。 罪悪感と自己嫌悪から、ひたすら自分を卑下して自罰的な行動を繰り返す。 「自分は決して許されない悪い人間です。だから今ここで死にます」。 もはや他罰も被害妄想も、自己の安全のためには何の意味も持たない。助けて欲しいという気持ちと誰も助けてくれないという気持ちが入り混じり、誰かに許してもらうのを期待して本当に死を選ぶことも珍しくない。 |
ダークサイド:期待
さて、最初にネタばらしをしてしまっていますが……タイプ6のダークサイドは期待です。
当然、人に期待するのは別段悪いことではないでしょう。ですが、タイプ6の期待は非常に強い。強すぎることも往々にしてあるのです。
強すぎる期待が何を生むのか?
まずは周りが期待に十分に応えてくれないという失望を生みます。
その失望から、今度は「こいつは応える気がないのか?」「実は味方ではないのでは?」という疑念が生まれます。
その疑念が大きく膨らみすぎるあまり、最後には敵視になります。
タイプ6は、まず自分自身に大きく失望します。そして自分の力に疑念が生まれ、「自分だけには自分の人生の舵取りを任せられない」と、ある意味の敵視に向かいます。
タイプ6は自己卑下や自己軽視が多いタイプですが、これは自分をある種敵視しているためでしょう。
さて、自分に舵取りを任せられないとなった時、今度は何を頼るのか? 自分を代わりに守り導いてくれそうな何かを頼ることになります。
頼る先は自己暗示、権力者、仲間など多岐に及びますが、まあ少なくとも自分自身の気持ちや直感ではないでしょうね。
ともあれ、タイプ6は自分の人生を委ねた自分以外の何かのために文字通り全力で尽くし、その見返りとして自分を守ってもらおうとするわけですね。
ですが、自分以外の存在は所詮自分の幸せのためだけになど存在してはくれません。頼っている格言はどこかで例外を含みますし、常識もルールも上の都合で動きます。仲間も権威者も、自分の都合を第一に動くのは当然と言えるでしょう。
「何だよ、私を守ってくれないじゃないか」と。
やがて「守ってくれる」「自分をいい方向に導いてくれる」と確信したものに裏切られたタイプ6は期待した相手に失望し、疑念を抱き、敵視し、その後は他の守ってくれる存在を探し、見つからなければもう一度期待してまた裏切られるか、あるいは新たな人やものを依代にすることでしょう。

人に尽くす一方で期待も高いのがタイプ6です。失望感はかなり強く感じやすいタイプでしょう。
ひどい状況だと、100点満点中500点を最低合格ラインにする人もいますねぇ……
正直、いろんな疾患を抱える人がいますが、とりわけ自己嫌悪を極めてうつ病になるか、暴発して境界性障害や自己愛性障害のケースが多そう……
人を嫌って敵視するケースも多いですが、それ以前にありのままの自分を嫌いやすいタイプです。責任感や周囲からの期待に押し潰されてうつ病になるケースが最多といえる……かも。
段階ごとのタイプ6
通常段階のタイプ6
神経質でやたら悲観主義的な人が多いタイプ6ですが、裏を返せば通常段階でめちゃくちゃ強いストレスを抱えているタイプとも言えます。
通常段階のタイプ6は、主に従順で盲信的な面と勇敢で攻撃的な面の2つの顔を持ち合わせています。
タイプ6が欲しいものは、絶対のバイブルや弱い自分を守ってくれる存在。自分の弱さを隠したりケアしてくれるなら、人でも物でも格言でも、形は問いません。ただ、自分を良い方向に導いてくれるならばいいのです。
タイプ6は常識や伝統を盲信すると言われることもありますが、その理由は「信じれば救われる」という精神に基づいた考え方にあると言っても良いでしょう。
何かを信じると決めたタイプ6は、とにかく献身的で、場合によっては命すら惜しくないと思えるほどに信仰の対象に従います。ですが、一方で盲信しすぎるきらいがあり、極端な場合は詐欺や悪徳宗教にも簡単に引っかかってしまうこともあるでしょう。

特につらい時や苦しい時は、ついつい助けてくれそうな存在にすがってしまうところがあるみたいですね。
「悪徳宗教はうつ病を患ったり、失業や流産で絶望している人をよく勧誘する」って話を聞いたことがありますが、善悪はともかくとして考えてますよねぇ……
一方、信仰対象の存在や正しさを守るためにも勇敢に敵と戦います。
例えば応援している野球チームが違う人の品性や性格を全否定したり、あるいは価値観が違う人のネガティブキャンペーンを仲間内で大々的に始めたり……
勇敢さが良い面に向かえば心強い存在になりますが、悪く出るとただ自分たちと違う存在を片っ端から全否定する変な人になってしまうことも少なくないでしょう。
信仰心の強さも諸刃の剣。良い面に向かえばいいですが、悪くなると周囲を傷つける凶刃です。そしてその凶刃は、時として信仰の対象に直接向けられることもあるのです。
タイプ6は二面性あるタイプと言われますが、裏にある顔はひとつ。「自分の人生を代わりによくしてくれる存在か、あるいはそうでないか」です。
不健全段階のタイプ6
退行:タイプ3
タイプ6は自力では人生を歩めないと思っており、内面は悲観的です。もし信仰対象に見捨てられたら……なんてIFも考えてしまいますし、その先の何にも守られずに逃げ惑う自分自身の姿も想像します。そして時折、そのIFが実現してしまうと確信してしまうこともあるのです。
悪い予感は、不安だらけのタイプ6には強烈なストレスになります。何としても最悪の事態を避けようとするあまり、信仰の対象にしがみつき、「自分たちは絶対に正しい」と思い込もうとして不健全なタイプ3のような振る舞いをすることもあります。
例えば、ライバルの讒言、特定グループへの嫌がらせ、マウンティング、差別、必要以上の営業トークや売り込み、自慢など……
ことストレス社会に生きるタイプ6にとっては、不健全気味のタイプ3が自慢げに語る人生観は共感できるものばかりでしょう。
ですが、そんなわざとらしい売り込みや嘘ばかりの自慢、自己顕示欲のためだけの薄っぺらな言葉では、人は逆に不審がってしまいます。
そうやって周りから距離を置かれ続けて見捨てられ不安が爆発すると、タイプ6は不健全段階に入り込みます。
自分と考え方が異なる相手を敵だと認識するようになり、必要以上に攻撃します。
また、他罰的でヒステリックになり、どんな問題に対しても「10:0で相手が悪い」と感じては仲間にも他の人にも攻撃的な面を向けるようになるかもしれません。
そして突き抜けるところまで突き抜けると、「取り返しのつかない事をしてしまった」と完全にパニックになってしまいます。
唐突に過剰な自罰を始め、これまでの免罪符やけじめとして「これで許してくださいお願いします!」と自分が大事にしていた宝物を手放したり、自分の体を傷つけるようになっていくのです。
健全段階のタイプ6
統合:タイプ9
健全なタイプ6は、未来に起こりうる問題を「絶対に起こるもの」「起こると大変な不安要素」ではなく、「万一の問題」と割り切って、気持ちをある程度切り離すようになります。
通常段階では色々と思い浮かんでしまうよからぬ可能性も極端に減り、心に余裕が生まれ、ある種の「全部わかった上での楽観主義」に行き着くこともあります。
水も甘いも噛み分けて、精神的な余裕と貫禄ある大人……みたいな感じがわかりやすいでしょうか?
頭と体のバランスがうまいことつり合っており、未来の「もしかしたら」ではなく、今この瞬間に焦点を当てて、健全なタイプ9のように前向きな態度や発言が多くなっていきます。
どっしりとして、揺るがず、どんな価値観にも一定の理解を示し、敵視しない。
健全状態に至り、覚醒したタイプ6は、仲間をいたわり、敵にもある程度の理解を示し、その上で途方もない問題にすらゆったりととりかかっていけるでしょう。
悲観的未来予測が最大のネックか

タイプ6の神経質さ、余裕のなさ、立場をコロコロ変えてしまうせわしなさ、すぐに敵だと思ってしまう過敏さ……こう言った性格の最大の原因は、「未来の可能性を色々考えてしまう」という点が原因といって過言ではないでしょう。
タイプ6の人生は、常に「かもしれない」運転です。
うまくいっても、「次の瞬間には達成した成果がトラブルで消えてしまうかもしれない」。
仲間ができても、「もしかしたらどこかで裏切るかもしれない」。
意見の食い違いが生じれば、「こいつは敵で私のことが嫌いなのかもしれない」。
このおかげでトラブルを未然に防いでいるのは事実ですが、残念ながらもっと大きなトラブルを、それも大量に呼び寄せてしまっている可能性は否定できません。
例えば達成した目標を糧に次へ進もうにも、結局不安が強まって進めず機会を逸する。
「どうせ裏切る」と冷たく当たってしまい、本当に裏切られる。
「反対意見は敵だ」と信じきった結果、イエスマンしか残らずまともな判断を下せなくなる……。
こういうのを聞くと「自分に限ってあり得ない」と一蹴してしまうのもタイプ6あるある(というかどのタイプにも「自分に限って」は存在する)ですが……やらかしてしまっていることも多いものです。

そりゃそうだ。どのタイプも囚われや根源的恐れに抵触する地雷なんて見たくもない。検討するより先に、感覚的に可能性を除外します。防衛本能ってそういうもんです
四の五の考えるのは後です。まずは何か目標を達成した時、あるいは望んだものが手に入った時、そのことを全力で喜んでみませんか?
タイプ6にとって「今この瞬間を深く味わう」という行為は、もしかすると「すでに迫っているかもしれない新しい危機から目を背ける現実逃避」のように見えるかもしれません。
ですが、そういう時こそ、思い出して考えてみていただきたいのです。
あなたがこれまで予知した危険は、具体的には何個中何個当てはまりましたか?
考えるより先に「全部当てはまった」と思ってしまった方ほど、まずは深呼吸。肩の力を抜いて、主観ではなく事実として、具体的に思いついた不安と実際に起きたことを比べてみてください。
きっと、思ったより遥かに少ないはずですよ。
多様性を持つとか敵味方の区分けをやめてみるとか、他にも対策は色々ありますが……そんなもの後からついてきます。
何よりまず、事実として「懸念している悪いことと実際に起きたことがどれだけ違うのか」をしっかりと理解するのが先です。
筆者:春眠ねむむ
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