おっとりして優しくてみんなの癒し系……実際はそんな人たちばかりではありませんが、そう思えてしまうような説明の受動型のタイプ9。
彼らは人との輪をむやみに壊すのを嫌うため、「やししい人」「いい奴」という評価をもらいやすいですが、一方で本人はのびやかな生活をしたいから人助けをしているだけで、基本的に見返りを期待していません。
そんなタイプ9の中にはある種の楽観主義とも言える人生哲学があり、それが通用しなくなってくると調子を崩してしまい、悲観的で暴発しやすい面が顔を出すこともあります。
タイプ9の退行
囚われ:怠惰
退行:タイプ6
退行については、以下の記事にまとめてあります。ご参照ください。
退行への道
タイプ9には大なり小なり、「人生全部何とかなる」という楽観的な人生哲学があります。
「血みどろの努力なんてしなくても、同じように明日が来るさ」
「きっと問題なんてない。ずっと平和にのんびりやれる」
と、あえて言葉に表すとこういうものに近いでしょうか。
タイプ9は無意識的か意識的か、こういう「人生万事何とかなるさ」というお気楽な考え方を固持し、楽観主義にそぐわないものを排除して自分の人生哲学を守ろうとする一面を持っています。
もともと本能センターらしく強烈な力を持っていますが、そのエネルギーは「使うことはないだろう」と封印し、ゆっくりと周囲を眺めているような人たちなのです。
極楽浄土……?
まあ、とりあえず楽観主義でどうにかなるとどっしり構えている人ってことです
さて、そんなタイプ9ですが、基本的に自分の楽観主義的な価値観を壊すものが嫌いです。
多くの場合は平穏を壊すものを悪として、受動攻撃や無視という手段を使って「相手が自主的にやめる/消える」ことを求めます。
ですが、世の中にはどうしても悲観的にならざるを得ない状況とか、あるいは楽観していられないほど緊急の状況というものもありますよね。
たとえば周囲の誰かに無理矢理巻き込まれて行動せざるを得なくなるだとか、すぐにでも自分が抱える課題を克服する必要に駆られる状況になっただとか……
タイプ9はこういう突発のネガティブイベントや、心の準備もできてないうちから能動的に動かなければならない状況が基本的に嫌いです。
健全でもない限り、タイプ9は自分の意思で動かなければならない状況や乗り越えなければならない大きな山を見て絶望し、悲観し、大きなストレスを抱えることになってしまうのです。
退行状態のタイプ9
基本的にタイプ9は、ストレスを感じると周囲から距離を置き、一線を引いたり縁を切ることで平和維持に努めます。
ですが、当然それだけでは対処しきれない問題もあります。
何をやっても逃げ切れないという強烈なストレスは、タイプ9の楽観主義を否定し、逆に悲観主義的な価値観に引きずり込んでしまうのです。
こうして退行し悲観主義に染まったタイプ9は、見るからに余裕がなくなっていきます。
次々と浮かび上がってくる最悪な未来や絶望的な想定に圧倒されて、より逃避的になり、とにかく必死で問題や不安の源を見ないようにします。
とにかく仕事に打ち込んだり趣味や遊びで連日寝不足になったり、少しでも暇な時間=勝手に不安が頭に浮かんでくる時間を減らすためにせわしなく動き続けるかもしれません。
あるいは「これさえあれば自分は大丈夫なんだ!」とすがるように特定のものをほしがったり、よくない薬や暴飲暴食に逃げて、外部の存在に安易に救いを求めることもあります。
退行してしまうと、性格も暗く卑屈になるか、あるいはヒステリックで何でも否定するようになることもあるでしょう。
下手をすると周期的に大爆発を起こして、周囲を震え上がらせる存在になるかもしれませんね。
健全度が下がればそれだけ不安が大きくなり、性格の卑屈さや爆発頻度がどんどん悪化していきますし、当人もどんどん心身を壊していってしまいます。
健全度ごとのタイプ9の様子は、以下の記事をご参照ください。
タイプ9の統合
統合:タイプ3
統合については、以下に詳しくまとめています。
単なるタイプ3に非ず
タイプ3の健全な姿に近いといっても、何もタイプ3をそのまま真似するのが良いわけではありません。
むしろタイプ3の功名心や「周囲に認められるためなら何でもする」という気概を真似たところで、重荷ばかりになって長続きしません。あれは、タイプ3が認められることだけを生きがいにしているからこそ身につくものです。
仮に無理をして人から認められるための戦略ばかりを練っても、そのうち体調を崩してしまいます。
タイプ9がタイプ3から学ぶべきは、むしろそこではありません。
「周囲の称賛を集めれば何でもいい」という通常~不健全のタイプ3ではなく、自分と正面から向き合い、自分の能力を世間でどう使っていくかを考えるタイプ3を見るべきです。
統合状態のタイプ9
通常段階では目立つことを嫌い、すべてを「どうでもいい」「関係ない」と割り切って受動的に生きることで平穏を維持しようとします。
ですがタイプ9は健全になるにつれて、物事に積極的に関われるようになります。
自分の能力をどう使うかはもちろん、周囲の人たちのためにできることは何か、あるいは自分がさらに高いステージに立つためには何が必要かなどなど……。
自らすすんでその他大勢に甘んじていたタイプ9が、主体的に行動を起こして自分の人生をよりよいものにしていこうと思えるようになるのです。
自分の平穏を壊すように感じる葛藤も不穏も、健全なタイプ9ならば持ち前の楽観思考で乗り越えていけることでしょう。
当然、時には不安になってしまったり、ゆっくり休んで鋭気を養うこともあるでしょう。
ですが統合段階を維持するためならば、一度休んでずーっとその状態を続けるわけにはいきません。当然、惰性で思考停止するのも同じくダメです。
健全なタイプ9にはそれがわかっています。
理由もなくつながりを断つこともしない。今をずっと続けていくことを必ずしもよしとしない。
タイプ9には、もともと本能センター特有の馬力が備わっています。健全になればなるほど、その馬力の強さを見せる機会も多くなるでしょう。
自分で考え自分で決めろ
タイプ9にとって、おそらく自分での決断というものが一番のネックになるでしょう。
その理由は、おそらく2つあります。
- 自分の気持ちが良くわからない
- 自分の決断が波乱や波紋を残しそうで怖い
正直、2に関しては「怖がっても自分が何もしなくても、いつかどこかで壊れる日が来るかもしれない」と割り切ることが必要でしょう。まあそれが難しいわけですが……
自分で決断しなくても変化はどこかで現れますし、ほっとくと波乱を呼ぶ存在もあります。
それらとそれとなく縁を切って自分の世界に閉じこもるだけでは、残念ながら回避しきれない問題も多くあります。
1に関しては、もう2によって本能的にストッパーが作動してしまっているとも解釈できてしまいますね。
正直、決断に時間がかかってしまうのは仕方ありません。ですが、時間がかかってしまうのとそもそも自分で決断しないのではまた話が違ってきます。
どれだけ時間をかけてもその場では何もわからなくても、自分の進退や環境のことは自分で考え、自分で決めていきましょう。
厄介なことに、面倒ごとほど無視すればするだけ選択の猶予がなくなる傾向にあります。
よく考えて決められるうちに、多少頭が鈍くなっても考え抜けるうちに、本気で決断し、自分の人性の舵取りをしていきましょう。
あなたの存在を、必要としてくれる人はいます。自分のことを放棄せず、しっかりと幸せにしてあげてください。
筆者:春眠ねむむ
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