エニアグラム三分類の中の一角にして一番有名な要素が、センターという考え方ですね。
心には本能センター(ガッツセンター)、感情センター(フィーリングセンター)、思考センター(ヘッドセンター)の3つのセンターが存在し、文字通り各タイプの感じ方やエネルギー源の中心となっています。
3つのセンター
さて、それでは早速、3つのセンターについて簡単にまとめてみましょう。

本能センター(ガッツセンター)
該当タイプ:タイプ8、タイプ9、タイプ1
潜在的感情:怒り
感情センター(フィーリングセンター)
該当タイプ:タイプ2、タイプ3、タイプ4
潜在的感情:恥
思考センター(ヘッドセンター)
該当タイプ:タイプ5、タイプ6、タイプ7
潜在的感情:不安
と、こんな感じですね。

思考センターの潜在的感情は、書籍では「恐れ」ってなってますけどね。
曰く、「わかりやすいし便宜上不安でいいや」とのこと。筆者のテキトーさも正直考え物ですね……
それぞれのセンターの名前でなんとなくの想像はつくと思います。
少し書籍から引用してみましょう。
本能センター | タイプ8、9、1は、現実での抵抗を維持することにかかわっている。 自分を守るために、身体的緊張に基づく境界を設ける。これらのタイプは、攻撃性(aggression)や抑圧の問題をもつ傾向がある。 自我の防衛の下に、かなりの「激怒」を抱えている。 |
感情センター | タイプ2、3、4は、自己イメージ(偽り、あるいは思い込みの自己への執着)にかかわっている。 自分自身について信じているストーリーや資質が、素の自分であると信じている。 自我の防衛の下に、かなりの「恥」の感情を抱えている。 |
思考センター | タイプ5、6、7は、不安(支えや導きがない)にかかわってる。 自らの防衛と安全を高めると考えられる行動をとる。 自我の防衛の下にかなりの「恐れ」を抱えている。 |
まあ、三者三様ですね。
「どのタイプも、それぞれのセンターを中心として性格を形成している」というのがエニアグラムの理論のひとつでして、それぞれ自身の本能、素の感情、疑念や不安に対して特に大きな反応を見せやすいです。
思考センター=頭がいいというわけではない
さて、ここで注意が必要になってくるのは、「センター=得意分野ではない」という点です。
例えば思考センターだからと言って、決して「他センターより賢い」とは限りません。

というか一般的に「頭がいい」とされるタイプ5にも、自分で情報を取捨選択できない残念な人はいますよね……
逆に、切れ者のタイプ9とかも意外と見ます
あるいは「本能センターはみんな粗野で頭が悪い」というのも「感情センターはどいつもこいつも感情の振れ幅が大きい」というのも、必ずしも正解ではありません。
センターとは性格の中心になりやすい部分であり、同時に歪みや問題の根本にもなりやすい点です。
当然「思考センターは頭でっかち」とか「本能センターは怒ると容赦がない」という傾向自体はありますが、所詮は傾向。大事なのはあくまで歪みの根幹です。
本能センター
該当タイプ:タイプ8、タイプ9、タイプ1
潜在的感情:怒り
時間軸:今ここ
執着:周囲のコントロール、抵抗
問題:攻撃、抑圧
求めるもの:自立
本能センターは「本能、体、生命力」といった原始的な部分と深く関わりを持っているセンターです。
当人の意識の有無とは関係なしに虫の知らせや直感といった動物的感覚が優れており、基本的に単純明快な思考を好んでいます。
自分の意思や好き嫌いがハッキリしており、あれこれ考えるより「自分はこうしたい」と感覚で決断して行動する人たちですね。
非常に生命力やエネルギーが強いタイプで、見ているものも「今この瞬間」。その場のパッシブや自己主張においては、大概他のセンターを圧倒します。

めちゃくちゃ頭がよくても、行動原理がビックリするくらいシンプルな人もいますよね。
だいたいあんな感じです
裏表がなくどっしりとして安定感がありますが、同時に文句があるときは事情を考慮せずハッキリ言ってしまうなど、裏表のなさが逆に災難につながる事もありますね。
また、不健全になればなるほど頑迷な一面を見せるようになり、意見を譲らなかったり全部自分の思い通りにしようとする事もあります。
タイプ8
ストレートな攻撃タイプですね。本能センターの「怒り」「コントロール欲」がわかりやすく出る人たちです。
エネルギーも関心も自分より外界に向いており、周囲への警戒を欠かさず、相手が自分の上に立って支配してくることにとことん抵抗の意を示します。
自身は正直に反論されたり意見をされるのが好きですが、往々にして徹底的に叩き潰してしまうので、結果的に誰の反論も許さない状況を作りがちです。
そして、そうやって作り出してしまった「みんなが言いなりの世界」をちょっと喜んだりしちゃうのも、タイプ8あるあるなのではないでしょうか?
タイプ9
エネルギーの向く先は自他両方。
各センターの中心は「センターの特徴が強すぎるため逆の行動を取りがち」という特徴がありますが、タイプ9も例に漏れず、自分の意見や強烈な部分を完全に封印しようとします。
それでもやはり本能センター。自分のペースを乱されるのは嫌いで、直接攻撃はしませんがそのぶん受動攻撃が多めのタイプです。
無視する、「Yes」と言いつつ逆をやる、曖昧な返事しかしないetc.
なんだかんだ、受動攻撃によって場を思い通りに制圧したがる点は本能センターのそれと言えるでしょう。
キレると怖いのも、それっぽさの1つです。
タイプ1
理想の自分を維持するために、自分の気持ちを抑制します。囚われとセンターの潜在的感情が同じあたり、内面は相当怒りで煮えたぎっているようですね。
外界に対しても支配されないように境界線を敷いていますが、それよりも自分の気持ちや本音を「理想の自分には邪魔なものだ」と敵視することに目が行きがちです。
上部の表にある「身体的緊張」が一番出やすいタイプでもありますね。自分の感情を押さえつけているぶん、体が正直に反応してしまうのでしょう。
ともあれ、もっとも自分に対して怒りを覚え、どんな感情でも自分の求めるものと違うなら無かったことにしようとしてしまい、結果として鬱屈とした気持ちをどこかに抱えてしまうタイプと言えます。
感情センター
該当タイプ:タイプ2、タイプ3、タイプ4
潜在的感情:恥
時間軸:過去
執着:偽りの自己イメージ、自分の虚像
問題:アイデンティティ、敵意
求めるもの:関心
恥の感情を簡単に表すなら、自己顕示欲や自己肯定感がごちゃ混ぜに合わさったものです。
一見すると共通点が分かりにくいですが、どのタイプも「明確な自己像を持っており、それが本来の自分を否定した上で立っているものである」という共通点があります。
このタイプは素の状態の自分に自信がなく、無価値な存在だとどこかで考えてしまっているのです。
「自分は何者であるのか」を明確に示すことを大事に思っており、また何者かになるために自分を捨てる事も厭わない側面を持ち合わせています。
こんな価値観を持ちやすいのも、「子供の頃に素の自分を否定された」「演じてきた自分という仮面だけが人に評価されていた」という過去を持つからこそ。
ありのままの自分には価値がないので、価値のある別の自分に成り代わろうとどこかで決意した人たちが、感情センターの本質というわけです。

未来にゴールを設定しがちですが、本当のゴールは過去にある。
そういう人たちですね
好き嫌いも「表現した通りの自分を認めてくれるかどうか」で判別しており、自分のアイデンティティを認めてくれない相手には敵意を抱く傾向があります。
ですが、心の奥底では「自分のアイデンティティが単なる仮面に過ぎない」とわかっています。わかっているからこそ、その気づきを否定するためにイメージ通りの自分に執着するのです。
いかに本当の自分に触れるか、そして素の自分にいかに価値を感じられるかが鍵となります。
タイプ2
「私を求めて!」「もっと私を必要として!」というのが、タイプ2をよく表す言葉です。
「素の自分は誰にも必要とされない」「誰も気にかけてくれず、存在価値がないものだ」という気持ちがどこかにあり、それを人に優しくする事で補っています。
明るく朗らかで優しい人は、(心の底から愛されるかどうかは別として)みんなに好かれますよね。タイプ2が見つけた仮面は、そんな「愛されキャラ」なのです。
ですが、本音では「自分はそんなにいい奴ではない」とわかっており、それを否定するために、時に相手を脅してでも自分との交友関係に縛りつけたり、過剰なまでにお節介を焼く事につながります。
敵意に対しても「そんなもの見せたら愛されない」と封印しがちで、たまに抑圧された「私をもっとちゃんと見てよ!」という心が爆発する事もあります。
タイプ3
「恥」の感情が非常に強く、また自分の感情に触れることを最も嫌うタイプとも言えます。
ですがそのぶん、本能的に感じている「今の自己イメージは自分じゃない」という感覚も強いです。そのため本当の自分に対する敵意も強く、素の自分を認めないように、理想の自分に執着します。
何としても成功して人の気を引こうと躍起になりますし、自分自身を鼓舞し、時に脅してでもアイデンティティ通りの人になろうとします。
ある意味、「自分を殺して新しい自分を作り出し、それを本当の自分として扱う」というのが正しいでしょうか?
理想の自分、輝かしい自分に向けて身を捨てるような努力をする一方、本当の自分のことは足を引っ張る敵とすら思っているのかもしれません。
タイプ4
タイプ2、3が自分の過去を否定して新しい自分を作る一方、タイプ4は昔の自分に強く引きずられています。
ですがその過去は大抵ドラマチックに演出されたものにより、「誰からも認められなかった悲劇の主人公」として、次第に「他人とは違う」という点に執着していきます。
周囲の気を引きたい思いはありますが、タイプ2やタイプ3ほど露骨ではありません。それよりもまず「オリジナリティ」というブランドが最重要。これこそが、普通に生きられなかった自分を形作る唯一の指標なのです。
タイプ2が「助けることで自分の価値を認める」のに対し、タイプ4は「助けてもらうことで自分の価値を感じる」タイプです。
「ほら、みんなこんな私を助けてくれてる!やっぱり生きててよかったんだ!」と、言葉に出すならこんな感じでしょうか。
自分を認めてくれない存在には、最も強烈な敵意を抱きやすいタイプでもあります。
思考センター
該当タイプ:タイプ5、タイプ6、タイプ7
潜在的感情:不安
時間軸:未来
執着:戦略・信念
問題:不安、心配
求めるもの:安全
思考センターは良くも悪くも頭で色々と考え、時に深読みしたり物事を複雑に考え過ぎて「こういうものだ」と決めつけてしまうところがあるタイプです。
目先の物事だけでなく様々な可能性や起こりうる物事、2手3手先まで色々なことを考えることができる……というか、考えてしまうのが思考センターの特徴ですね。
色々な可能性や選択肢を考えてしまうので、思考センターにはとにかく不安がつきもの。
「問題Aのせいで今は行動できない。でももしAが解決しても今度は問題Bとか問題Cが発生するかもしれないし、それらを解決しても今度は問題Dが新たに出てくるかもだし、そもそもAが本当に解決できるかもわからないし……」
ぐるぐると色々なことを考え過ぎて、頭がパンク寸前まで悩み続けるのが思考センターの素の性格になります。

不安の大半は取り越し苦労だったりしますがね。
それでもやめられない、悩むのが好きかどうかに限らず止まらない。嫌な話です
思考センターは、心の底では揺らがないための支えを求めています。
自分を理不尽から守ってくれるもの、あるいは自分の代わりに完璧な選択をしてくれるもの、尻拭いをしてくれものなどなど……形は違いますが、自分の人生を不安から守ってくれる存在を欲しがっている人たちですね。
そんな思考センターの大きすぎる不安の出所は、簡単に言えば「色々なことを考えすぎるせい」と言えます。
ありもしない問題の可能性や万一のトラブルを「ほぼ発生してしまう」というつもりで身構えてしまうので、常に不安や恐怖が絶えないタイプ。これがネックです。
ただあるがままに物事を受け入れて、「ああなる恐れがある」「どうせこうなる」というような雑念を取り払い、自分や周囲の物事を見つめ直す静かな時間が必要なタイプと言えるでしょう。
タイプ5
内向的でエネルギーは内向きになりやすく、不安に対しては基本的に「自分の力でなんとか立ち向かおう」と正面から直視しようとするタイプ。
こう書けば自分のことは自分でなんとかしようとする美徳のように見えますが、そもそも不安自体が取り越し苦労や被害妄想ばかりなので案外そうでもありません。
むしろ「とりあえず不安を払拭できる可能性があるものはなんでも集める」「挑戦しないことを正解と捉える」「安全地帯に引きこもる」という、不安への安易な対処のお手本通りに動きやすいタイプと言えるでしょう。
裏にある本音は「自分はこの世間でまともに生き残れない」「自分は世間から求められる力を持っていない」という無力感。
強烈な無力感ゆえに、問題に当たると逃げや篭城という手段を取りがちで、「確実に勝てるようになってからまた出直す」「とにかく力を蓄える」という手段を取りがちです。
極端な無力感に苛まれたタイプ5は、自分以下と感じた存在を見つけると水を得た魚のように相手を否定し続ける事もありますね。
タイプ6
タイプ6は思考センターの中でも特に不安を感じやすく、自分の中にある不安を直視するのが非常に難しいです。
そのため不安を「そんなもの感じない!」と強固に主張したり、「これでいいんだ」と思えるような人生のバイブルに依存することで不安から目を逸らします。なかった事にするのです。
基本的に自分の能力や性格に自信がなく、人との関わりや友達付き合いなど、外部にエネルギーを放出する事で「自分には仲間がいるから大丈夫」と実感しようとしたり、誰か守ってくれそうな人を探しています。
ですがある時突然、「何か失敗してしまったかも」「きっと嫌われた!責められる!」と外界に対して不安を覚えてしまい、今度は仲間を敵視したり自分の内側へ引きこもる事で外部への不安に対処します。
ですが、引きこもって自分の課題だけに集中したり人から離れる事で今度はまた自分の無力感や「受け入れてもらえないかも」という不安を覚え、また外海へと繰り出し……と、こんな感じで自分の外界と内界を行ったり来たりしています。
おおよそ自分の信念か信じられる仲間なのか、あるいは所属する会社なのかは人によりますが、大抵何かを「信じれば救われる」と聖書のように深く信仰しており、異教徒と思しき人を見つけると徹底的に攻撃して信じるものの正当性を守ろうとする人もいます。
タイプ7
不安からとことん逃げ回っているように見えて、実は半端に対応してしまっているのがタイプ7の特徴です。
タイプ7が特に感じやすいのが、「今を逃すと永遠にこのチャンスはやってこないかもしれない」「チャンスをふいにしてしまえば、やれること(可能性)はどんどん減っていく」という未来に対する不安です。
不安を感じさせない明るく陽気なキャラクターも、何にでも飛びつく好奇心旺盛で積極的な姿勢も、「今しかない!」という強迫観念がそうさせていると言っても間違いではないでしょう。
また、自身の暗い部分を絶対に見ないようにしているのも大きな特徴のひとつ。
真面目な相談にも失恋した仲間の気持ちにも無関心ですが、それらは「暗い話を聞くことで自分の隠していた部分が見えてしまうかもしれない」という恐れもあってのものなのです。
もっとも頭の中が騒がしいタイプですが、それらも「思考が散らかっていれば自分の暗い部分が見えなくなるから」というのが大きいからと言えるでしょう。
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