MBTIのように「あなたはこのタイプです!」とすっぱり断言するだけでなく、同じタイプでもいろんな派生があるのがエニアグラムの特徴です。
今回見ていくのは、エニアグラムという類型をややこしくしている大きな要素の一つである3つの本能タイプについて。
各タイプの中には自己保存的本能、性的本能、社会的本能の3つの本能があるとされています。
ネットやSNSの表記でタイプ表記の後ろにsp/soとか、so/sxとかついてることがありますよね?つまりそれのことです。
それぞれ何が強く何が弱いかを見ていくだけでも、同じタイプの人でも性格は大きく違ってきますよ。
3つの本能タイプとは?
さて、まずはサックリと3つの本能タイプの特徴を見てみましょう。
自己保存型(sp):自分の生活や暮らしに興味あり
社会的本能(so):コミュニティへの所属や群の中でも生活に関するものを好む
性的本能(sx):強烈な体験や刺激、探究心や好奇心を刺激するものを好む
それぞれ自分の命に直接関する事(生存欲求)、社会の一員となり孤立しないようにしたい欲求(社会的欲求)に加え、自分の好奇心や探究心を満たしたいという個人的な欲求を合わせた3つの本能をそれぞれ区別したものです。
ERG理論(生存欲求、関係欲求、成長欲求)の方がわかりやすい気がしますけどねぇ……
とにかくより上質な生存環境や安全を確保したい自己保存型(生存欲求)、人と良好な関係を保ったり認められたい社会的本能(関係欲求)、そんなことより自分の興味や人生においてより上の段階を目指したい性的本能(成長欲求)、みたいな。ちょっと違う?
エニアグラムとの関係
この3つの本能タイプはエニアグラムのサブタイプの1つとされていますが、実のところエニアグラムからは独立した独自理論です。
というのも、この本能タイプはエニアグラムのタイプを考えなくても、本能タイプだけを導き出すことは十分に可能なのです。
そもそもエニアグラムの性格タイプと本能タイプ、それぞれ性格の中で指している部分が全く異なります。
エニアグラムの性格タイプは根源的恐れや欲求、それに付随した囚われを根幹にその人の性格を区分し当てはめている。
本能タイプは、その人の生き方や社会生活のスタンス、個人的価値観を表している。
つまるところ、本能タイプは囚われやその元となる根源的恐れや根源的欲求とはまったく別の、単純な好みや癖といった面に照準を当てていると考えればわかりやすいかと思います。
当然タイプごとにバラつきはあるでしょうが、どのタイプにも3つともの本能タイプがそれぞれ存在していますね。
それこそ自己保存型のタイプ3やタイプ6とか、社会的本能型のタイプ5やタイプ8とか……
同じタイプでも性格が異なる?
本能タイプが違えば、当然同じタイプどうしでも性格が全然変わってきます。
例えば同じタイプ7でも、他の本能タイプがいかにもタイプ7らしい活動的な人物が多くなる反面、自己保存型のタイプ7は自分のホームを中心にした狭い範囲で活動したがる傾向があります。
あるいはタイプ6でも自己保存本能が強い人は身の安全や安定性を強く求めますし、社会的本能が強いと仲間への信頼感や所属欲求が強くなります。
タイプ解説の額面通りの性格をしている人はいない。これは類型の共通認識ですね。
ある意味では「解説通りでない人がいることに対する言い訳」とも言えますが、むしろ「このタイプの人はみんなここに書いた通りの人だ!例外はない!」という類型があるとすれば、大体の人がタイプ判別不可能になるか踏み込んだ解釈ができなくなります
さて、一通り解説したところで……ここからは、それぞれの本能がどういうものなのかを見ていきましょう。
自己保存的本能
人生何をするにも、まずは暮らしと身の安全です。
自己保存型本能は一言で表せば、自分の環境や暮らしを安定化させる・より快適化させることを1番に考える本能です。
心地よさ、快適さ、あるいは物資の充足と……とにかくわかりやすい生きやすさや暮らしやすさを1番に考える人は、自己保存的な本能が強いと言えます。
自己保存型本能が強いと……
- お金や健康に強い関心
- 衣食住に快適さを強く求める
- 食べ過ぎ・余計な出費などに不快感を覚えやすい
- 整理整頓を心がけており、自分の身の回りを整えることが大事
- 不要なものやお荷物があるのが割と苦痛
- なんだかんだ、我が家が一番落ち着く
- 食べ物は決まっていつものアレ
- 余計なことをして今の環境を壊したくない。保守的
当てはまる項目が多ければ多いほど、自己保存的本能が強い可能性が高いです。
自己保存的本能が高い人は、自分の生活や環境を守ること、グレードアップさせることに強い興味を示します。
現実主義で堅実、実際的なことに興味を持つ人が多く、大それたことよりもまず身の回りのことに対処しようとする傾向が強いでしょう。
衣食住には並々ならないこだわりを持つ人も少なくはなく、健康的な食事や生活習慣、我が家や慣れ親しんだ仕事や生活の維持、必要な物資(主にお金や生活必需品)の備蓄なんかに強い興味を示します。
また、保守的で目の前のことに集中し、チャンスに対しては警戒したり尻込みする人も多いようですね。
一方で不健全になればなるほど正常な判断力を失い、「健康的でオーガニックな食材でなければ病気になる」みたいに給与帯以上の上質な物を得なければならないという強迫観念に駆られたり、逆に「貯蓄が無くなったら人生終わりだ」と1日1食もやしだけで過ごそうとするなど、行きすぎた節約生活をすることにもつながるかもしれません。
どっちも見たor聞いたことがある話らしいですが……まあ、眉唾ですよね。
相当不健全なのかしら?
自己保存的本能が弱いと……
- 夜更かし、徹夜といった不摂生を平気でする
- 不健康な食べ物でも全く気にしない(暴飲暴食)
- お金やカロリーの計算がひたすら苦痛、というか基本やらない
- リソース管理が雑になる(体力を考えず予定を詰め込む、深夜でも平気で活動)
- 宵越しのお金は持たない主義
- チャレンジ精神旺盛で強気
強すぎるとなかなかチャレンジ的な行動に結びつかない保守的な性格に落ち着きやすいのが自己保存的本能ですが、弱すぎると弱すぎるでまた大きな問題です。
何よりまず、健康を度外視した生活習慣をしても特に気にしない人が多いです。
当然例外もありますが……部屋を散らかしたままで平気な人、糖尿病になっても平気で暴飲暴食を繰り返す人は、そういう病気やメンタル的な事情を除けば自己保存的本能が弱い人の典型なのではないでしょうか?
あとは、「お金の計算ができない」というのも、よくある特徴ですね。
「お金なんてサラ金でいくらでも手に入るし、サラ金がダメになったら今度は闇金で……」とまあそこまで楽観的に未来を見ているかはわかりませんが……ともあれ、特にひどくなるとこういう行動をとってしまうケースもありますね。
リソース管理は自己保存本能が低ければ低いほど苦手になってくるので、特に物質的な幸福に関しては深刻な問題を呼び起こすこともあります。
社会的本能(ソーシャル)
所属欲求や承認欲求が主な指標です。
社会的本能は、「みんなと仲良くしたい」とか「集団で重要なポジションを占めたい」といったようなグループや集団ありきの本能です。
人は誰しも1人では生きていけないとよく言われますよね。というか、実際その通りかもしれません。
人は社会的な生物と言われていますし、群れで生きる生命体の1つです。
であればこそ「社会でうまく生きたい」という社会的な欲求も当然芽生えますし、その考え方が強い人も出てくるわけです。
社会的本能が強いと……
- 孤独は嫌いだし苦手
- 共通の目的や同じ価値観のもとに人と関わりたい
- 挨拶や会話は基本だし、店員さんやその辺の人とも普通に会話できる
- グループ内での自分の立ち位置に敏感
- 他人同士の関係やパワーバランスにも敏感で目を光らせている
- 友好的な態度を基本とするが、自分に合わない人とは必要以上に親しくなりたくない
- 仲間外れにされるのは我慢ならない
- グループ外の人には意外と冷淡、あるいは敵対的
当てはまる項目が多ければ多いほど、社会的本能が強い可能性が高いです。
社会的本能が強いと、集団の中で生き抜く術や集団を扱う能力が高くなります。特に組織内のパワーバランスや中心人物になるための駆け引きなど、組織内での身の振り方は強ければ強いほど冴えていますね。
社交的で積極的に人と関わろうという人が多く、家族や友人、同僚、国際的グループなど……組織への参加とそこで受け入れられることに特に心を砕きます。
「人から受け入れられたい」「交流を通じて自分の居場所を集団内で確保したい」という気持ちが強い人たちです。
一方で集団への所属意識が強く、集団に気に入られるために敵対組織をとことん敵視する人も中にはいます。
とにかく集団に守られること・また自分がその集団を守ることで居場所を作りたいと思う反面、実は親密な仲を求めているわけではありません。
人との交流自体は楽しみたい一方で、あまり仲良くなりすぎるのを避けるきらいがあるのです。あくまで狙いは、自分の居場所を作りたいという一点だけ。特定人物と仲良くなりすぎることで悪影響が起きるのも、また社会的本能が強い人が忌み嫌う事態なのです。
不健全になると逆に人嫌いになったり、反社会的になることもあります。
要するに、社会を怖がって反発的になるわけですね。
ですが、やはり社会とのつながりを完全に断ち切りたいわけではありません。心のどこかで「もしうまくいけば……」という思いがあるのです。
人を信用できるほどにいい思いをしてこなかった場合、社会や人に特に不信感を持ちやすい傾向にあるようです。
嫌いにも2通りありますよね。「こいつを消したい」という思いと、「期待に答えてくれないから嫌だ」という思いと。
特に不健全なソーシャルタイプの人は、後者の傾向が強いですね
社会的本能が弱いと……
- 人との繋がりがいらない
- 群れない孤高の人
- 人を必要としないし、必要とされなくてもどうでもいい
- 協力者が少ない、あるいはいてもどこか噛み合わない
- 社会的貢献とか社会の一員としての責任とかがよくわからない
- 孤立しやすい
「組織の一員」という概念がよくわからない。とりあえずルールや運営方針には従ってるけど、心底どうでもいい。そういう人は社会的本能が弱い傾向にあるかもしれません。
必ずしも「自分さえよければいい」というわけではない。でも、なんか身勝手というか、足並みを揃える必要を全然感じてない。そういう人も多いですね。
個人としての感情や理念、あるいは蓄財やゆっくりしたい気持ちが先走っており、非常に付き合いが悪い人とか、あるいはそもそも人付き合いをしたがらない人もいます。
人生における人間関係は一期一会。常に社会から孤立しており、集団でいることの利権も義務も興味がない。
そんな生き方自体は別に悪いとは言い切れませんが、行きすぎるとやはり問題も大きいでしょう。
「自分は必要ない存在。自分にとっても、周囲は必要ない存在」
そんな生き方を地で行くと、やがて敵に囲まれて行き詰まることにもなり得ます。
性的本能(セクシャル)
別にエロい人でもセクシーな人でも、何なら子作りだけを指すわけでもありません。
あくまで方向性としては、「1対1の深いつながり」「強い刺激」を求める人です。要するに、強力な体験を求めるという感じですね。
もともと生殖に関連する本能だけあって、少数との密接なつながりを欲するという特徴も持っています。
自分がもっとも興味深い人、興味深いものを見つけて強くつながり、深く関わっていたいという本能です。
性的本能が強いと……
- 探究心旺盛
- 熱意的で、好きなことや人にのめり込む
- 自分を満たしてくれるものを探している
- 人生を深く楽しむ探究心
- 刺激的かどうか、興味があるかどうかで行動基準を決める傾向がある
- 興味事や自分を魅了するものばかりに意識を奪われやすい
- 直感的に相性の良い人を見つけやすい
性的本能が強い人は、とにかく情熱的で物事や人とのつながりを強く求めます。
常に自分を魅了する強烈な体験、自分を満たしてくれそうな魅力的な相手を求め、刺激的な人生を謳歌しようとしている人たちです。
自分のセンサーをビンビンに機能させており、例えばパーティー会場に入ったらまずおもしろそうな人や話して楽しそうな人を探します。
この時社会的本能が強いと味方になってくれそうな人や影響力がありそうな人をまず探しますし、自己保存型の人は他人よりまず食べ物や椅子みたいな自分の快適さに影響するものを探しますね
当然人だけでなく、興味は多岐に渡ります。仕事や趣味の旅行、映画、おもしろそうな知識などなど……ものや概念であっても、自分を強く惹きつけるものには時間を忘れて没頭するところがありますね。
性的本能は人生を楽しむ上で非常に重要な本能になります。
ですが同時に、強すぎるのも考えものな本能です。
というのも、性的本能が強すぎる人たちは総じて目の前のことが苦手。物事に優先順位をつけるのが苦痛ですし、意地でもやりたいことは全部やり切ろうとします。
何なら寝食を忘れて不摂生に陥る可能性もありますし、ストーカーやヤンデレといった問題属性を抱えることもありますね。
また、不健全化すると逆に親密さや人生の面白さを避けるようになり、好きなことを前にするとぎこちないロボットのような動作になる人もいます。あるいは見を捨ててでも好きなものに執着することも……
性的本能が弱いと……
- 物事に熱中しづらい
- ルーチンワークに陥る
- 保守的な思考や人を避ける行動につながりやすい
- 刺激とか楽しさとかどうでも良い
- ドライでミニマリスト的な生き方
- 親友0人
性的本能が極端に弱いということは、それだけ親密な関係性や人生における充足を軽視していることにつながります。
その結果、親友と言えるような友人を持てなかったり、そもそもビジネスライクな関わり以外を求めない人も多いですね。
当然、これが必ずしも悪いわけではありません。ですが行きすぎるとやはり人生に価値を見いだせず、冷酷な人物像になっていく点は否めないでしょう。
例えば社会的本能が強くて味方を多く作れても、性的本能が欠けると味方に対して情愛が薄くなります。場合によっては疎ましく思ってしまうかもしれません。
もっとも、性的本能ばかりが強くてもストーキングのような迷惑行為につながる面はありますが……
ともかく、性的本能があまりに弱い人は、人生を楽しむ気がほとんどないケースが多いです。むしろ人生を苦行と捉えており、中にはそれを人に押し付けることもありますね。
何が良い悪いではない
結局のところ、3つの本能の何が良くて何が悪いという話ではありません。3つの本能は、すべて動物的には存在しても当たり前のものです。
じゃあ何が問題なのかといえば、やはりバランスと言えるかもしれませんね。
自己保存的本能だけで生きていれば、自分の蓄財と健康ばかりで人のことなんて知ったことではなくなります。
社会的本能ばかりが強くても、集団内のパワーゲームや強者との関係維持以外に興味を示せなくなります。
性的本能ばかりでは、いずれどこかで破綻を招きます。
どの本能を邪険にするでもなく、自身の強い本能、欠けている本能を知り、それぞれ浮き出た課題に対応して生きるようにすることが大事です。
筆者:春眠ねむむ
X :@nemukedesiniso
threads:@shunmin.nemui
参考書籍
エニアグラム解説
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